①については、企業が生産拠点の海外移管を進めたことや、その過程で国内生産財の「高付加価値化」が進んだことにより、円安の影響力が低下しているとする一方、②については、企業のグローバル化によって、日本の企業が海外事業から獲得する収益や、配当などを通じた国内還流は増加しており、国内における設備投資を押し上げる力につながっているとしています。
③については、輸入ペネトレーション比率(総供給量における輸入の割合)の高まりを背景に、円安が日本経済に与える影響が強まっていると考察されています。つまり、物価の押し上げ効果が強まっている、という趣旨です。物価が上がれば生産する数量が増えなくても、価格が上昇した分だけ企業収益はプラスです。
要約すると、①の効果は低減しているとしつつもまだ残っており、②・③を通して日本経済にはプラスが続く、という考察でした。
では、円安が続いた方が日本にとっては「良い」ことなのでしょうか。
「円安なら良い」とは限らない?
日銀はこの2022年1月の展望レポートにおいて、「3つの留意点」に触れています。
第1に、「円安であっても円高であっても、経済主体の対応が追い付かないペースで急激に為替相場が変化すれば、経済に悪影響をもたらす可能性はある」という点です。
例えば、円安が急激に進む場合について考えてみましょう。本来は円安がプラスである輸出企業であっても、多くの製品を作るのにまず海外から材料の輸入を行っていることが多いです。
そのため、円安の急進は輸出企業にとっても「円安の弊害を被る要因」となる可能性があります。また、輸出した製品を売るより先に、円ベースで上がってしまった輸送コストが輸出の妨げになることもあり得ます。
第2に、「為替変動の影響の方向性や大きさは、業種や事業規模によってマチマチ」という点です。
円安が進行する場合、輸入企業にとってはいうまでもなく厳しい逆風となりますし、家計にとっては輸入物価の上昇を通じたインフレの影響で、実質所得が下押しされ、購買意欲は低下すると考えられます。
また、例えば輸出企業であっても、規模によって大きな差がありそうです。
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