スズキ「ソリオ」は、意外に侮れない車だった 新型4代目の競争力を徹底検証

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室内空間は車体サイズの割に広い

そんなソリオは、全体としては非常に万能性のあるクルマだ。4代目は3代目に比べて細かいところまで配慮して各部が改善されているし、内容の割に価格が安いのも魅力だ。

軽自動車と比べると圧倒的に室内が広い。そして最大5人が乗れる。イメージキャラクターとして新たに、ジャニーズ事務所の人気グループ「TOKIO」が起用されたのは、ソリオが5人乗りであることをアピールするためらしい。スズキが得意とする軽乗用車は乗車定員4人が上限。ソリオならそれよりも1人多いということを強調するためだ。

後席の居住性には課題も残る

ただし、後席の中央席は狭く、着座感も硬い。短時間の乗車であればなんとかなる、という感じなのは否めない。後席の乗り心地も悪くはないが、重心が高いため、コーナリングや車線変更など横方向の動きには敏感に影響を受けるので、ドライバーは配慮してあげたほうがよさそうだということを付け加えておきたい。

走りの面で軽自動車と比べると、エンジンの排気量が2倍近くの差があり、相対的に動力性能に余裕がある。操縦安定性についてはトレッドの大きさが効いて、ソリオのほうがずっと安定感は高い。燃費もハイブリッドタイプなら、軽自動車の低燃費モデルと良い勝負ができる。

同じコンパクトハイトワゴンのカテゴリーでみても、ソリオの競争力は高い。室内寸法は一回り大きなクルマと同等以上。主にフロアの低さと2列目の広さが要因だ。シエンタやフリードのような3列シートタイプは2列目のシートのサイズが小さかったり、居住空間が大なり小なり犠牲になっていたりするケースがあり、5人以下しか乗らないならソリオでも十分だ。

サイズの小ささは取り回しのよさにつながるし、車体が軽くエンジンの排気量も小さいので経済性にも優れる。一方、本当に3列シートが必要ならシエンタやフリードという選択肢がある。とくにこの夏、フルモデルチェンジしたシエンタは、かなり完成度も高い。ソリオは、これらの競合車種に対しては価格で勝負ということになりそうだ。

キューブやラクティス、bBあたりの競合車は、すでに新鮮味が薄れているし、もともとソリオはスライドドアという大きなアドバンテージを持っていた上に、今回マイルドハイブリッドをメインに据えてダメを押した感がある。

強敵となりそうなのはポルテ/スペイドだが、やはりマイルドハイブリッドが選べること、ひいては燃費の公表値で勝ることや、先進安全装備の充実ぶり、さらには最小回転半径がソリオは4.8mでポルテ/スペイドは5.2mと小回りが利く点などにおいて、ソリオは上回っている。考えれば考えるほど、ソリオほど万能なコンパクトカーはほかになく、普通車の販売に強くないスズキが売っているとは思えないほど、意外に侮れない車種なのである。

(撮影=尾形 文繁)

岡本 幸一郎 モータージャーナリスト

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おかもと こういちろう / Koichiro Okamoto

1968年、富山県生まれ。大学卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の編集記者を経て、フリーランスのモータージャーナリストとして独立。軽自動車から高級輸入車まで、国内外のカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでも25台の愛車を乗り継いできた経験を活かし、ユーザー目線に立った視点をモットーに有益な情報を発信することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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