スズキ「ソリオ」は、意外に侮れない車だった 新型4代目の競争力を徹底検証

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左が「ソリオ」、右が「ソリオ バンディッド」

パワートレインについて、マイルドハイブリッド主体のラインアップになったのも新型の特徴である。これは機構的にはスズキが軽自動車で採用している「S-エネチャージ」のシステムと基本が同じだ。加速時にモーターでエンジンをアシストし、ガソリンを使わない減速時にタイヤの回転を利用して発電し、その蓄えた電機を加速時のモーターアシストに使ってエンジンの負担とともに、ガソリン消費量を減らす仕組みである。

なぜ呼称が違うのかというと、軽自動車ではすでに「エネチャージ」が定着しているのでそれを踏襲し、普通車にはよりわかりやすい「ハイブリッド」を用いる方針としたのだという。ただし、4代目ソリオに使われているモーターは、「S-エネチャージ」のものとは別で出力向上が図られている。

カタログ値に出てこない実用域の出力とトルクを向上

組み合わされるデュアルジェットエンジンは、圧縮比を従来の12.0から12.5へと高めた改良版だ。圧縮比を0.5も高めるとそれなりに性能向上が期待できるが、今回、最高出力(91馬力=PS)と最大トルク値(12.0kg・m)に従来から変化はなく、カタログ値値には出てこない実用域のトルクと出力が向上しており、余力は燃費に振っている。

4代目ソリオのHV仕様で実際に走ってみると、やや飛び出し感を覚えるほど俊敏な発進加速を実現している。3代目で出足にややもたつきを感じたのとは大違い。むろんモーターのアシストもあるだろうが、それよりもエンジン特性の変化や、CVT(無段変速機)の変速制御の改善。さらには軽量化が効いているように感じられた。

軽くなった恩恵はフットワーク面でも体感できる。軽いと車体の動きを抑えるためにサスペンションを固める必要性が薄れるので、セッティングに余裕が生じ、快適性に振れる。また、2WD車リアサスが従来のITLからビーム式になると快適性が落ちるのではという気もしたのだが、そんなこともなかった。ビーム式になり、横剛性が向上しているので、街乗りではあまり関係ないものの、限界域での安定感が増したこともお伝えしておこう。

ビーム式リアサスの採用は、実用性の面でもメリットをもたらした。ラゲッジのフロア下にも、けっこう大きな積載スペースが確保できたのだ。室内空間も、新規プラットフォームの採用によりほぼ全方位にわたり拡大している。センターメーターの採用により運転席前がスッキリとして開放的になった。

また、インパネの形状もウォークススルーしやすいよう工夫されている。後席スライドドア開口幅が拡大し、ステップ高が下がったことで、乗り降りしやすくなり、車外から後席に座らせた子供の面倒を見やすいことなど、使い勝手の面でも重宝する。

先進安全装備は、ステレオカメラ方式の衝突被害軽減システムをはじめ、「誤発進抑制」「斜線逸脱刑法」「ふらつき警報」「先行車発進お知らせ」などの機能がオプション設定されており、このクラスではもっとも充実している車種の一つといっていい。

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