(第37回)「宮内庁ご用達」を日本企業はやればよい

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感謝されながら安い製品を輸入できるのなら、輸入を増やさなければ愚かだ。そのためには、開発力や企画力がなくてもよい。「目利き」さえ確かならよい。先人が築いたブランドを利用して、厳格に審査するだけでいいのだ。こんなうまい左うちわの商売はない。人もうらやむ三代目だからこそできることだ。

しかし、日本企業は、その特権を十分に使っているとは思えない。事実、私が調べた限り、アリババで見る企業の主要取引先に、日本企業の名は多くない。日本企業は、国内の工場で生産しているのだ。中国で生産するにしても、OEMではなく、自社中国工場での生産なのだろう。

日本企業は、自分が持っている力に気づいていないのか? いや、気づいてはいるけれど、身動きがとれないのだろう。国内に従業員がいるから、彼らを養うために生産が必要なのだ。それは分かる。しかし、そのために、雇用調整助成金やエコポイントの費用を負担し、そのうえ高い製品を買わされるのでは、日本の消費者はたまったものではない。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)

(週刊東洋経済2012年3月3日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。撮影:谷川真紀子
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