東ドイツの面影「ベルリンの鉄道」90年代の記憶 戦前製電車が「壁」で寸断された路線を走った街

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初のドイツ滞在となったベルリン訪問だったが、想像していた高速列車ICEやスマートな103型機関車の姿は見られず、やって来るのは旧東ドイツ由来の無骨な機関車ばかり、塗装もボルドー赤(ワインの色からそう呼ばれる)の暗い色の車両ばかりで、近代的で洗練されたドイツの鉄道とはまったくかけ離れたイメージだった。

232型
ベルリンで最初の一コマはソ連製232型ディーゼル機関車だった=1996年(撮影:橋爪智之)
【写真】旧東ドイツの車両が目立つ中、工場から出場した当時最新鋭の128型試作電気機関車を捉えた貴重な一コマ

当時のベルリンのターミナル駅だったツォー(動物園)駅まで来て、ようやくいくつかのICEや103型機関車を見かけた時はホッとしたものだった。

だが、これは今となってはとんでもなく貴重な経験をしたと思っている。2025年現在も、当時の旧東ドイツ由来の機関車は現存しているが、いずれも塗装は交通赤色と呼ばれる明るい塗装へ変わり、当時の面影はない。興味がないから撮らない……ではなく、見たものすべてを撮影しておいて本当によかったと思う。

180型電気機関車
チェコ・ポーランド直通用の180型電気機関車。旧東ドイツ国鉄の車両だ=1996年(撮影:橋爪智之)

大変貌したベルリンの街と鉄道

空き地が目立ち、建物はどれも薄汚れていて、どことなく暗い雰囲気が漂っていたベルリンも、ドイツ統一から30年以上が経過し、首都として大きく変貌を遂げた。鉄道も旧態依然とした垢抜けない車両はほとんど姿を消し、清潔で空調の効いた、洗練された車両に置き換えられた。

【写真をもう一度見る】東西ドイツ統一後、1990年代のベルリンを走った列車。戦前製の「Sバーン」電車や旧ソ連製の機関車、チェコ製の路面電車など「社会主義時代」の面影を残す車両の数々

1990年代の写真を眺めると、今のベルリンとはまさに隔世の感がある。一方で社会主義時代の面影を色濃く残した街や鉄道のことを思い出すと、今のほうがはるかに快適で過ごしやすいはずにもかかわらず、決して戻ることはできないあの頃のことを少し懐かしく感じる。

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橋爪 智之 欧州鉄道フォトライター

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はしづめ ともゆき / Tomoyuki Hashizume

1973年東京都生まれ。日本旅行作家協会 (JTWO)会員。主な寄稿先はダイヤモンド・ビッグ社、鉄道ジャーナル社(連載中)など。現在はチェコ共和国プラハ在住。

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