トランプ関税の効果と決定の内側(上)経済的整合性に欠け、貿易赤字解消にも、製造業復活にもつながらない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
4月2日、ホワイトハウスで国別の関税率表を手に、相互関税導入を発表するトランプ大統領。予想以上の高率で、世界の市場は混乱を来している(写真:Bloomberg)

予想されていたとはいえ、トランプ大統領の相互関税の発表は世界に大きな衝撃を与えた。日本製品に課せられる相互関税率は24%と、相対的にかなり高い。トランプ関税の本質を理解するためにも、まず相互関税率がどうはじき出されたのか知っておいた方がいい。それは驚くほど簡単に計算されていて、「鉛筆なめなめ計算した」と言って過言ではない内容である。

論理的根拠に乏しい「相互関税率」の計算

 アメリカ通商代表部(USTR)が「Reciprocal Tariff Calculations (相互関税計算)」と題する資料を発表している。同資料には「相互関税はアメリカと各国との二国間の貿易不均衡を是正するために必要な関税率として計算された」とある。要するに「アメリカの貿易赤字をゼロにする」のが目的だ。

「長期間にわたってアメリカの貿易赤字が続いているのは、アメリカが貿易相手国に搾取されてきたためである」というのがトランプ大統領の認識だ。USTRの資料にも「国際貿易のモデルでは貿易収支は長期的には均衡すると想定されているが、過去50年間、アメリカは一貫して貿易赤字を計上している」と指摘している。

常に貿易収支を均衡させる関税率が存在するかどうか疑問だが、ともかくトランプ大統領は、各国別に貿易均衡を実現するため相互関税を課すと決めたのだ。

次ページ計算式の2要素に明確な根拠なし
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事