トランプ関税の効果と決定の内側(上)経済的整合性に欠け、貿易赤字解消にも、製造業復活にもつながらない

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貿易収支は多角的な貿易によって決まる。自国から見て収支が赤字の国もあれば、黒字の国もある。それを総合して自国の貿易収支が決まるのに、トランプ大統領は二国間の貿易均衡を求めるという過ちを犯している。高関税による貿易均衡は、結果的に「自給自足の経済」を求めているようなものだ。

本来、貿易赤字削減の是非から論じるべきだが、それは横に置いて、実際に相互関税でアメリカの貿易収支が均衡するかを考えてみる。アメリカ国内での輸入品販売価格への関税転嫁はある程度進むだろう。ただ、「価格弾性値」は個々の商品によって異なる。アメリカで生産されていない商品では関税分を100%価格に転嫁しても、需要は大きく減らないだろう。

国内に競争企業が存在すれば、関税が引き上げられても、輸入業者は値上げをせず、利益率を下げる形で対応するはずだ。その場合、大きく輸入が減ることはない。輸出業者、輸入業者、小売業者がそれぞれ市場の状況に応じて対応する。トランプ大統領が期待するほど、貿易赤字は縮小しないだろう。

製造業の復活は実現するとしても数年先

トランプ関税にはもうひとつの目的がある。アメリカの製造業の復活だ。グローバリゼーションによる工場の海外移転で職を失った白人労働者層はトランプ大統領の大きな支持層で、選挙でトランプ大統領は彼らに「職を取り戻す」と約束してきた。だが、アメリカの製造業の雇用の減少は企業の海外進出が理由ではない。

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