トランプ関税の効果と決定の内側(上)経済的整合性に欠け、貿易赤字解消にも、製造業復活にもつながらない
USTRが発表した計算式は簡単なものであり、経済学の知識がなくても十分理解できる。
「輸入品価格に対する輸入品需要の弾性値」は、価格が変動した時に需要がどれだけ変動するかを示す比率である。仮に輸入品価格が1%上昇し、輸入品需要が1%減少した場合、その弾性値は1になる。「関税の輸入品価格への転嫁率」は、引き上げられた関税額がすべて輸入品価格に転嫁されるわけではないので、関税増加分がどれだけ輸入品価格に反映させたかを示す。
今回、トランプ政権は弾性値を4としていて、USTRはその根拠を、多くの研究で弾性値は3~4と推定されているからとしか説明していない。また、「関税の輸入品価格への転嫁率」は0.25と設定されていて、これも明確な根拠はない。
貿易赤字額÷輸入総額を「寛容」で半分に
計算式に弾性値=4と転嫁率=0.25を入れると、2つの数値の積が1になるので、計算式は次のようになる。
さらに(輸入-輸出)は貿易赤字額なので、こう書き替えられる。
なんのことはない、相互関税率は輸入総額に対する貿易赤字額の比率なのだ。比率が高ければ、相互関税率も高くなる。貿易が均衡すれば、相互関税率はゼロになるが、貿易収支は毎年変化する。相互関税率が毎年見直されるかについて、明確な説明はない。
日本に当てはめてみよう。アメリカの貿易統計では、2024年のアメリカの貿易赤字は(1482-797=685)で685億ドルなので、相互関税率は「685÷1482×100」から46%だ。ただトランプ大統領は、「寛容(lenient)」から半分を課すとしているので相互関税率は23%になる。アメリカ政府がどの統計を使っているかわからないが、この値は対日相互関税率24%とほぼ一致する。
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