河村たかし・名古屋市長が記者会見 南京事件の全面否定は「誤解」と釈明

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河村たかし・名古屋市長が記者会見 南京事件の全面否定は「誤解」と釈明

南京市幹部に対して2月20日に「いわゆる南京事件はなかったのではないか」と語ったことが問題になっている河村たかし名古屋市長は27日、発言後初の定例記者会見に臨んだ。

名古屋市と南京市は姉妹都市で、市長の発言は20日に中国共産党南京市委員会の幹部が市役所を訪問したときのもの。その後、伝えられた発言内容に対して中国外務省が不快感を示したほか、中国メディアも大々的な批判を展開。中国国内では名古屋訪問をボイコットする呼び掛けがなされるなど波紋が広がっていた。

自ら書いた釈明文を配布

27日14時から市庁舎内で会見した河村市長は自ら書いたという釈明文を配布し、記者団とのやりとりのなかで発言の経緯について次のように説明した。

【1】昨年8月に、市長から駐中国名古屋総領事に、南京事件について話し合いの機会をつくってほしいと申し入れた。

【2】2月上旬に、名古屋市会議員2名が南京を訪問し、同じ趣旨の申し入れをしたところ、友好団体幹部から「話し合うのはいいことだ」との返事を得た。

【3】20日の表敬時には「自分の父親が南京の人々の温かいおもてなしにより、元気に早く帰れたので私が生まれた」といったエピソードを披露し、そのなかで問題となった発言も出た。会談はなごやかな雰囲気に終始した。

【4】「いわゆる南京事件はなかったのではないか」という発言が、「南京大虐殺はなかったとの持論を展開」と報じられたことで、自分の発言の趣旨があたかも南京では何もなかったとするものであるかのように誤解された。

【5】「いわゆる南京事件というのはなかったのではないか」と話したのは、象徴的に30万人とされるような組織的な大虐殺はなかったのではないかという趣旨である。

【6】しかし、南京からの使節団に対して「30万人の大虐殺」と露骨な表現をするのは非礼であるので、「いわゆる南京事件」と表現した。

【7】日本軍が非武装の中国人を30万人も殺害したという事実はないと考えているため、「いわゆる南京事件はなかったのではないか」という発言は撤回しない。いろいろな立場を超えて率直な話し合いができるようになることを希望している。

「一人もなかったとは言っていない」

質疑のなかで市長は「遺憾なことが一人もなかったと言ったわけではない。戦闘行為に伴う残念なことはあった」としつつ、「非武装の市民を組織的に大量虐殺したことはない」とした。南京事件の存在を完全否定することで中国側と全面的に対決するのを避け、関係修復の道を探る構えとみられる。市長は中国の駐日本大使に、直接事情を説明したいと表明。事務方にその申し出を行うよう指示したことも明らかにした。

会見に参加した香港フェニックステレビ(鳳凰衛視)の東京支局長は「市長は『誤解』とするものの、何が誤解なのかは明確に伝わらなかった。率直な話し合いをしたいと言っても、そのための信頼関係が損なわれているのが現状ではないか」と指摘した。

関係修復への道は必ずしも楽観できないが、今秋に指導者の交代を控える中国も日中関係の不安定化は避けたいはず。市長からの関係修復の申し出にどう応えるか、中国側にとっても難しい選択だ。

(写真説明)27日午後、名古屋市役所内で記者会見する河村市長

西村 豪太 東洋経済 コラムニスト

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にしむら ごうた / Gota Nishimura

1992年に東洋経済新報社入社。2016年10月から2018年末まで、また2020年10月から2022年3月の二度にわたり『週刊東洋経済』編集長。現在は同社コラムニスト。2004年から2005年まで北京で中国社会科学院日本研究所客員研究員。著書に『米中経済戦争』(東洋経済新報社)。

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