日枝氏は辞めたけれど体質は変わらない? フジテレビの経営刷新に残る「3つのモヤモヤ」の正体
そして私が最もモヤモヤするのが、日枝久氏についてだ。今回、「日枝氏退任」と大きく報じられたが、ほかの役員陣と一緒になんとなく退任してしまった感がある。結局、日枝氏は何の責任を取ったのか、はっきりしない。
今回生じた問題の根源に、長らく人事権を握り続けた日枝氏の責任がある、というのは一連の騒動に関心を持つ多くの人が抱いている印象だろう。それなのに日枝氏がなぜ辞めたのか、明確には示されていない。
それに関連して気になったのが、会見での日枝氏についての金光氏の言い方だ。「今の状況を心配されている」「新体制の内容はお届けした」「とくにお言葉はなかった」というように、外部に向けて身内への敬語は使わないという“社会人の基本常識”ができていなかった。
なぜ金光氏が残ったのかというモヤモヤと併せて考えると、日枝氏に思わず敬語を使ってしまう人物がフジ・メディアHDの会長を続けることに、不信感を持たざるをえない。
霞が関の省庁人事は、とうに役職を離れたOBが口を出すと言う。取締役を離れても日枝氏が隠然たる影響力を保つ懸念は残るように思われてならない。少なくとも、株主からはそう突っ込まれかねない。
日枝氏はもっと前の段階で会見を開き、自身の責任を明確に示し、その責任を取って退任を宣言すべきだったと私は思う。それなしに広告主が戻ってくるか、懸念される。
フジテレビに本来求められた組織刷新とは?
いくつか挙げた中で最大の懸念はやはり、フジテレビとフジ・メディアHDの役員の顔ぶれがほぼ同じである点だ。
清水氏は2月の会見で、同社の同月の放送収入が前年に比べて9割も減少したことを明らかにしている。監督機能と業務執行機能の分離が進まないフジテレビの旧態依然ぶりにあきれて多くのスポンサーが戻ってこなければ、同社の放送事業はいずれ立ち行かなくなる。
その意味でも、社外ではない社内の取締役に外部からの起用が必要だったのではないだろうか。まったく新しいリーダーが今後のフジテレビを率いる斬新な姿が求められていたのではないか。
今回の人事は、清水氏を軸に内輪でまとめようとしているように映る。杞憂に終わればいいが、今のフジテレビには何が起こってもおかしくない。
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