高校無償化に103万円の壁…所得制限は悪なのか?所得制限ナシで格差を是正するのは至難の業、前代未聞の予算再修正が石破内閣の求心力を削ぐ

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衆議院を通過した修正後の予算案には、日本維新の会が提案していた高校授業料無償化が盛り込まれた。全世帯を対象とする高等学校等就学支援金の支給に係る所得制限を2025年度から事実上撤廃するものである。

そういえば、岸田文雄内閣下で実施を決定したものだが、2024年10月から児童手当の支給で所得制限が撤廃された。

さらにいえば、衆議院で予算案を可決するのに合わせて税制改正法案の修正も行われた。その修正は、「年収103万円の壁」の引き上げをめぐり、当初案では控除額を123万円まで引き上げるものだったが、それを160万円まで引き上げるとともに、課税前給与収入で850万円以下の人までは段階的に控除額を減らしてゆくという仕組みが盛り込まれた。いわば、所得税の基礎控除に所得制限をつけるものである。

これに対して、基礎控除に所得制限をつけると制度が複雑になるとともに、所得税の減税の恩恵が限定的になるという批判が噴出した。

このところ、所得制限を撤廃することは是であり、所得制限を設けることが非であるかのような言説が多い。そんなに所得制限は悪いのか。

所得制限の撤廃で誰に恩恵があるのか

そもそも、所得制限をつける根本的な理由は、所得格差を拡大させないようにするためである。所得制限を撤廃して恩恵を受けるのは中高所得者層であって、所得制限以下の所得層は、所得制限を撤廃しただけでは何の恩恵もない。

特に、2025年度の高校授業料無償化は、保護者の年収がおおむね910万以下の高校生には何の恩恵もない。加えて、東京都はすでに所得制限を撤廃しているから、東京都に住む(親の子である)高校生には、何の恩恵もない。

所得制限なしに投じられる予算が確保できるなら、高所得者(やその子ども)に支給する金額を減らして、より低所得者(やその子ども)に支給する金額を増やすことで、所得格差はよりよく是正できる。

所得格差是正は必要なく、機会の平等の方が重要だ、というなら所得制限撤廃はどちらでもよいだろう。しかし、所得格差是正も必要、ということなら、それらをどう両立してゆけばよいかを真剣に考える必要がある。

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