フランスにデジタル産業の集積地が現れた 北部の都市リールで進む地域活性化
フランス北部、ベルギーとの国境に近いノール県に位置するリールはパリ、リヨン、マルセイユに次ぐ第4の都市だ。ノール県の県庁所在地で、人口は約23万人。YKKなど日本企業の進出も多く、日本人向けの補習校もある。
市長はかつて社会党の第一書記を務めたマルティーヌ・オヴリー氏。欧州統合の立役者の1人としても知られるジャック・ドロール元欧州委員会委員長の娘としても知られる人物だ。
TGVでパリから約1時間
リールはフランスが世界に誇る新幹線、TGVでパリから約1時間の距離。この地でかつて栄華を誇った産業の一つが繊維だった。今も重工業の拠点はあるが、繊維産業は衰退してしまった。
こうした中、地元では今、デジタル産業、具体的にはビデオゲーム、テレビアニメ、Eコマース、3Dプリンタなど、いわゆるデジタル関連企業の集積を形成することで産業構造の転換を進めようとの取り組みを進めている。
特定の産業、関連企業を集めることで地域経済の活性化を図る手法は「クラスター」と呼ばれる。「クラスター」は「ブドウの房」という意味。このやり方は日本でも取り入れられている。たとえば、第一次産業のウェイトが高い北海道では、「食」のクラスター作りを推進する。
リールにある「プレーン・イマージュ」はデジタル産業の一大拠点だ。繊維工場として使われていた建物を利用。外観はそのまま残し、内装に手を加えた。立ち上げから数年経つベンチャー企業や起業してまもないスタートアップの企業までが90以上が入居している。
その1つ、「ワカニム」は6年前に起業した会社。日本のテレビで放映されるアニメにフランス語訳を付けて動画配信を行う。配信のタイミングは日本での放映と同時だ。創業時は社員がわずか3人だったが、今は8人が勤務する。
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