企業調査のプロが教える「危ない企業」の見分け方 有利子負債、ワンマン経営者…“10の危険信号”

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銀行に提出していた決算書によれば、売上高は約59億円を誇り、利益についても黒字を持続。こうした決算書を信じた銀行がシンジケートローンを組成するなど、一定の信用も得ていた。

ところが実際は大手の参入によって商品の売価は10分の1程度まで下落。主要取引先からも取引を打ち切られたことで売上高は大きく落ち込み、慢性的な赤字に沈んでいた。そのため資金を調達する必要に迫られ、粉飾決算に手を染めたのだ。

粉飾の手口は、利益を黒字にするために売上高を水増しするというもの。単純なように見えて、これを見破るのは意外に難しい。とはいえ方法はある。その1つは、従業員1人当たりの月間売上高(売上高÷従業員数÷12カ月)を業界標準と比較するというもの。業界平均が245万円のところ、このメーカーは5倍近い1141万円と明らかに異常だった。

財務以外も要注意

コロナ禍や市場環境の変化で、売り上げが落ち込む企業は珍しくない。そうした中で価格転嫁できていないにもかかわらず売上高を維持している企業は、何かあると疑ってみたほうがいい。

その他、現預金や売掛金、棚卸し資産、そしてリース債権などにも粉飾の跡が見られた。

シンジケートローンを組成しているからといって、昨今は安心材料にはならない。メインバンクがリスク回避を目的に自行の融資を他行に回しているケースも多く、その後倒産に至っている企業が相次いでいるからだ。

このような財務以外にも、例えば税金滞納などのコンプライアンス違反は倒産と紙一重だし、ワンマン企業も経営者が急逝すれば大きなリスクとなるから注意深く観察したほうがいいだろう。

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後藤 賢治 東京商工リサーチ情報本部情報部課長

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ごとう・けんじ

2006年東京商工リサーチ入社。横浜支店調査員、同支店情報部を経て15年から現職。倒産企業の取材や経済分析を担当。

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