「うれしいのは、家族揃って夕飯が食べられること」フレンチのシェフから転身したラーメン店主のセカンドキャリア

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帰国後、愛知県のレストランや箱根のリゾートホテルを経て、29歳で東京・文京区音羽の「ブラッスリー ピニョン」で料理長を務めた。2003年、37歳のときに7歳年下の妻と都営地下鉄大江戸線牛込柳町駅近くに「ル・デッサン」を開店させた。

全12席のこぢんまりとした店だったが、オードブルとメイン、デザートをそれぞれ選ぶプリフィクススタイルのコースもさることながら、心温まるサービスも評判を呼んだ。

“朝ラー”で激変した生活サイクル

フレンチレストラン「ル・デッサン」
東京・牛込柳町で増田さんが営んでいたフレンチレストラン「ル・デッサン」(写真:増田さん提供)

オープンしてから10年が経ち、増田さん夫婦にとって待望の第一子を授かった。大喜びした反面、妻が出産、子育てのために店に出られなくなると考えると、これまでと同じポテンシャルで仕事を続けていく自信がなくなった。

そこで地元の島田市へ戻って、好きだったラーメンを作ろうと決心した。店名を「ル・デッサン」のままで2016年にオープンさせた。

「東京にいた頃、フランスの修業時代に知り合った仲間など7人で定期的に焼肉を食べに行っていました。メンバーがだんだんと増えていって、今は60人にまで膨れ上がりました。有名店のシェフである彼らが東京からわざわざ食べに来てくれて、SNSでウチを紹介してくれるんです。その反響は大きくて、本当にありがたいことです」(増田さん)

営業時間は、朝7時から13時半。静岡県藤枝市を中心に焼津市や島田市などで見られる、いわゆる“朝ラー”の店だ。朝4時半に起床して、スープに火を入れて開店準備。13時半の閉店後は後片付けと明日の仕込みをして18時頃には帰宅する。ディナーがメインだったフレンチ時代とは生活サイクルも大きく変わった。

「鴨がら・鶏がらだしのトマトしょうゆラーメン」(1750円)も人気の1杯。鴨の脂で炒めたトマトの甘みとほのかな酸味がアクセントになっている。豚バラのチャーシューもうまい(筆者撮影)

スープのベースは、鴨がら・鶏がら、岩手ほろほろ鳥、函館ほたて、ローストした鴨がら、鶏がら・かつお・煮干の5種類と、ここまで種類が多いラーメン店は見たことがない。麺や具材も用意せねばならないので、仕込みも大変なことは容易に想像できる。

「麺も製麺機で一度に80人前を作ることができるので、オードブルとメイン、デザートをそれぞれ5種類仕込んでいたときに比べると楽ですよ。いちばん嬉しいのは、家族揃って夕飯が食べられること。フレンチでは考えられなかったことですから」(増田さん)

作る料理はラーメンになったものの、フレンチの仲間と肩を並べたいという増田さんの変わらぬ思いがあるからこそ、有名店のシェフたちは増田さんを慕って店を訪れるのだろう。ラーメンのみならず、増田さんの料理人としてのセカンドキャリアからもエスプリを感じた。

永谷 正樹 フードライター、フォトグラファー

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ながや まさき / Masaki Nagaya

名古屋を拠点に活動するフードライター兼フォトグラファー。

地元目線による名古屋の食文化を全国発信することをライフワークとして、グルメ情報誌や月刊誌、週刊誌などに記事と写真を提供。

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