「うれしいのは、家族揃って夕飯が食べられること」フレンチのシェフから転身したラーメン店主のセカンドキャリア

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店名からもわかる通り、増田さんはもともとフランス料理店のシェフ。今やラーメン店は和食やイタリアン出身の料理人もいる。筆者もそういった店を数多く取材してきた。たしかにオマール海老やトリュフ、ポルチーニ茸などの高級食材を使ったラーメンはおいしかったものの、わざわざラーメンにする必要はあるのか。

むしろ、パスタで食べた方がうまいのではと思った。だから正直、増田さんのラーメンもそんなに期待していなかった。

フレンチの定番食材「ほろほろ鳥」のラーメン

取材したのは、看板メニューである「岩手ほろほろ鳥だしのしょうゆラーメン」。骨を取り除いて開いた肉に詰め物を巻いて火を入れたパロティーヌなど、ほろほろ鳥はフレンチでは定番の食材である。ラーメンだけにまさかメンマを巻いたほろほろ鳥が麺の上にのるのだろうか。まったく想像ができなかった。

ほろほろ鳥の肉やガラは、東日本大震災で被災した岩手県へ炊き出しのボランティアへ行った際に知り合った石黒農場から仕入れている(筆者撮影)

目の前に運ばれたのは、ほろほろ鳥のチャーシューと煮卵、かいわれ大根がのるシンプルこの上ない1杯。ビジュアルこそ見事に予想を裏切られたが、スープをひと口飲んで愕然とした。鶏や魚介とは比べ物にならないほどしっかりとした旨みといつまでも続く余韻に感動すら覚えたのだ。

また、ストレートでありながら適度にスープを吸い、小麦そのものの味と香りが楽しめる麺もこれまで味わったことがないほどレベルが高い。

増田さんが作る1杯は、ラーメンに軸足を置いているのだ。それもしっかりと。フレンチのエッセンスなどという使い古されたフレーズは使いたくない。「フレンチのエスプリを感じるラーメン」と言わせてもらおう。とにかく、巷の元◯◯のシェフのラーメン店とは完全に一線を画していたのだ。

つい、懐かしくなって増田さんに連絡をすると、

「フレンチ時代の仲間から『第二の人生はラーメンでもカレーでも何でもいい。フレンチの料理人から転身して成功した一例になってくれ』と言われたのが大きな力になっています」と、増田さん。後日、あらためて話を聞いてみようと店を訪ねた。

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