除染ガイドラインに異議あり 目先のコスト論より長期的な配慮が必要

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除染を行う102の自治体が各地に設置した仮置き場から順次に搬出し、中間貯蔵施設に搬入し終えるにも時間がかかる。ガイドラインに先立ち、昨年10月に公表された「除染への取り組み」(原子力災害対策本部資料)によると、時間短縮のため、中間貯蔵施設はセル方式とし、完成した区画から順次搬入していくというが、目算どおりに行くのか。それ以前に中間貯蔵施設の立地が決まるのかどうかすら懸念が残る。

第1段階の仮置き場の設置からして、住民のコンセンサスが得られず難航している自治体は多い。ネックになっているのがほかでもない、「ガイドライン」だというのだ。

仮置き場の仕様は、汚染土壌の放射線量によって細かく規定されているが、おおむね、地面を掘り遮水シートを敷いて汚染土を入れ、上から遮水シートをかぶせた上に、30~40センチメートルの盛り土をするというもの。

除染の主眼は半減期30年の放射性セシウムだが、セシウムから出る放射線はベータ線とガンマ線で、薄い金属板や土でかなり遮蔽できる。上下から遮水シートでくるんで土をかぶせ、さらに非汚染土を詰めた土嚢で周囲を囲めば、理論的には十分に放射線を遮蔽でき、地下水への漏出も許容の範囲内としている。

だが、住民の心理はそう単純には割り切れない。ガイドラインでは例として学校の校庭を挙げているが、子どもの通う学校の敷地内に、“仮”でかつ遮蔽されているとはいえ、汚染土を置いておくわけにはいかないという心理が働くのは当然だ。

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