日本株を脅かす「トランプ円高」は現実的でない 一方で日銀の利上げには「意外なプラス効果」も
このように世界経済全体として方向感は悪くない。そうした状況下、日本株が下押ししている要因としては「過度な円高」があるかもしれない。
3月3日にはドル安を志向するアメリカのドナルド・トランプ大統領が日本や中国に対して、自国通貨安への誘導をしないようにと牽制をする一幕もあった。一部には過度なドル高是正を実行した1985年のプラザ合意になぞらえ、トランプ大統領が「第2のプラザ合意」を仕掛けると見る向きもあるようだ。
今年は「昭和100年」「プラザ合意から40年」という節目の年でもあり、「アメリカの政治的要請でドル安が進行する」との臆測はいかにも信憑性がありそうだ。
現実味に欠ける「ドル安円高誘導」
ただし、その可能性はゼロに近いだろう。そもそも現在のアメリカは、ドル高で製造業が極端に衰退しているわけでもなければ、それによって失業率が上昇する構図にもない。トランプ大統領はアメリカ国内に投資を促すよう、製造業の復活を声高らかに主張しているが、「ドル安→製造業復活」という経路は政治的に華々しく聞こえたとしても、アメリカ内の高コストを踏まえると、実利には乏しい。
また1985年当時、プラザ合意は日本、アメリカ、イギリス、西ドイツ(当時)、フランスといういずれもアメリカと親密な国々だけが当事者であった。それに対して現在のアメリカが是正を試みているのは中国を筆頭とするグローバル・サウスとの通商であり、地政学的な戦略も含んでいる。
いかに大胆不敵なトランプ大統領とはいえ、さすがにドル安を狙った政治的合意が成立するとは極めて考えにくい。第2のプラザ合意は「噂」としてそれなりに面白いが、現実味には欠ける。そもそもドル安は関税引き上げと相まって、アメリカのインフレ圧力を増幅させる可能性が高いため、トランプ政権が本気で狙うとは考えにくい。
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