日本株を脅かす「トランプ円高」は現実的でない 一方で日銀の利上げには「意外なプラス効果」も
また、株式市場では、日銀の利上げが企業収益を圧迫するとの懸念も意識されている。その点、日銀の利上げが織り込まれ、長期金利が上昇傾向にあることは、すでに日本株の下押し要因となっていると考えられる。債券と株式の利回り格差を考えた場合、今や日本の長期金利水準(3月6日時点で10年金利は1.5%程度、30年金利は2.5%程度まで上昇)は、一部の投資家を満足させている可能性があり、株式の魅力を削いでいる。
見落とされがちな家計へのプラス効果
一方で、利上げで「借り入れコスト(金利支払)増加→設備投資減少」という伝統的・教科書的な引き締め経路によって景気下押し圧力を高めるという効果が発現することは想定しにくい。マクロ的にみれば企業は貯蓄主体であり、実質無借金の企業が増加していることから、金利負担増加に伴う企業活動への下押し圧力はかつてと比べて弱まっている公算が大きい。
また利上げによって、家計が受け取る預金利息の増加が見込まれることも重要だ。それがうまく消費に回れば、個人消費は底堅さを増し、企業収益の追い風にもなる。
さらに利上げによって円高が進行すれば、輸入物価の低下を通じて家計の実質的な購買力が増加し、内需拡大に貢献する可能性もある。特に食料品は、天候要因に加え、ここ数年の円安に伴う肥料価格や輸送コストの累積的増加が価格高騰の背景にあるため、円高が家計に及ぼす好影響は大きい。
ちなみに、日銀が政策目標に掲げているのは生鮮食品を含んだ消費者物価指数(CPI)を前年比上昇率2%に維持することであり、展望レポートで予想を示しているコアCPI(生鮮食品を除く指数)やコアコアCPI(食料とエネルギーを除く指数)ではない。
逆に言えば、今後も生鮮食品の上昇が続けば、より積極的な利上げが実現する可能性もある。日銀の利上げが景気減速につながるという懸念が株式市場で意識されているのは事実であろうが、いざ利上げを進めてみると、景気が崩れないどころか、むしろ加速するという意外なシナリオもある。そうなれば、内需関連株が物色される可能性があるのではないか。
(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)
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