長崎にある"ほぼ最古"のRC造「廃団地」再生の物語 「50年先にも残したい」 県出身の若者が悩みつつ奮闘

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外観
階段の外に浴室が増築された不思議な外観になっている(写真:筆者撮影)

お風呂に入るためには部屋を出て階段を半階分上がることになるが、それでも銭湯に通うことに比べれば便利だったのだろう。

風呂があることで建物前面の通路が狭く、住戸が暗くなっていることから改修では風呂を撤去することも検討したそうだが、解体費が高くつくこと、宿泊で使うためには風呂が必要であることなどからそのままにしておくことになったそうだ。

面白いのはキッチン。床から天井までの棚が作りつけられており、しかも、引き出し、引き違い戸、網入りの戸など入れるものを考慮した設計で、コンパクトながら使い勝手はよさそう。

キッチン
キッチンの様子。右側に配膳用の小窓がちらりと見える。シンクの右にはダストシュートの入り口も(写真:筆者撮影)

和室との間には配膳のためだろうか、小窓が設けられている。そこから料理が手渡しされていた風景を想像するとなんだか楽しい。古い団地にはお約束の使われなくなったダストシュートもシンクの横に設置されている。

「魚ん町+」として生まれ変わる

改修が終わっているココトト運営の1階部分は床を下げた開放的なシェアキッチン、シェアリビングが印象的。古い建物の変貌ぶりが味わえる一方で、レトロな雰囲気のトイレも。この後整備されるコワーキング、シェアオフィスも居心地がよさそうな空間だった。

取材時には建物前面通路をイベントなどで使う際に必要なテーブル、ベンチを作るワークショップが開かれており、子どもも含め多くの人が参加していた。この日作った家具類は2025年4月に行われる予定のグランドオープンでお披露目されることになるのだろうか。

伊東さん
ワークショップでペンキを塗るココトトの伊東さん(写真:筆者撮影)
ワークショップに参加した人たちの懇親会
取材当日、ワークショップに参加した人たちの懇親会。九州のみならず、日本全国から人が集まった(写真提供:ココトト合同会社)

魚の町団地改め「魚ん町+」(うおんまちプラス)として動きは始まった。あとはこの建物が地域の交流拠点として、廃団地の活用事例のひとつとしてどれだけ魅力的な場になっていくか。「契約期間の10年はもちろん、その50年先にも残していきたい」という伊東さんの言葉を楽しみにしたい。

【写真で見る】築75年を超える魚の町団地。外観や内部の様子、新しい活用の様子など(28枚)
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中川 寛子 東京情報堂代表

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なかがわ ひろこ / Hiroko Nakagawa

住まいと街の解説者。(株)東京情報堂代表取締役。オールアバウト「住みやすい街選び(首都圏)」ガイド。30年以上不動産を中心にした編集業務に携わり、近年は地盤、行政サービスその他街の住み心地をテーマにした取材、原稿が多い。主な著書に『「この街」に住んではいけない!』(マガジンハウス)、『解決!空き家問題』(ちくま新書)など。日本地理学会、日本地形学連合、東京スリバチ学会各会員。

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