長崎にある"ほぼ最古"のRC造「廃団地」再生の物語 「50年先にも残したい」 県出身の若者が悩みつつ奮闘

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また、ココトトでは通りに近い2戸を自分たちで改修。コワーキングスペースやシェアキッチン、シェアオフィスなどとして貸し出し、収益を上げていく手もある。

シェアリビング
共用部のシェアリビング、シェアキッチン部分。床を落としてあるため、天井が高く、気持ちの良い空間に(写真提供:ココトト合同会社)

ただ率直なところ、それが事業全体の収益をプラスに導く可能性は高いとは思えない。だが、にぎわいを生み、全体が埋まるようにしていくにはそうしたやり方も必要だろう。

ある程度の体力がある企業が社会貢献その他の意図で取り組むならわかるし、自治体にビジネスセンスを求めるのが難しいことも理解できないではない。今回の長崎県の建物を残そうとする決断は英断だと思うが、民間がすべて出資することを前提にするというやり方にはいささか疑問を感じる。

今回のように地元の役に立ちたいという熱意ある若い人たちがいる地域ばかりではない。熱意、やりがいだけに頼るやり方に未来があるようにも思えない。今後の古い建物の活用を促進するという意味でも他の自治体も含めて見直しを考えていただきたいものである。

魚の町団地の現在、山梨から通う人も

さて、本題に戻り、魚の町団地の現在である。ココトトは契約前からワークショップを開くなどしており、これまでに3回開催されたワークショップでは地域住民はもちろん、幅広いエリアから毎回30~40人ほどが参加、熱心な意見が交わされてきた。

中には遠く山梨県から初回のイベントに参加、そのまま2戸を借りた人もおり、その部屋はいずれ「泊まれる48型」を売りにした民泊になる予定。山梨からDIY作業のために通う熱意には驚きしかない。

それ以外では子育て支援の事業者、シェア型書店と産後ケア事業などですでに半分の6戸が決まっており、現在、各戸では少しずつ改修が進められている。

入居者募集にあたっては飲食店や事務所など幅広い利用を想定しており、長崎のために、社会に貢献したい人に来てほしいと希望している。使える状態にするまで自ら改修しなくてはいけないなど入居者にもリスクがあり、そのあたりの覚悟は必要だろう。

住戸は玄関を入ったところに洗面所、トイレ、台所があり、その奥の北に6畳、南に8畳の和室がある。バルコニーはなく、風呂は1978年に階段室の前に増築された。

階段の踊り場部分に増築された風呂
階段の踊り場部分に増築された風呂。各戸にひとつずつ用意された(写真:筆者撮影)
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