ココイチ「高級化で客離れ」に見るカレー店の変容 牛丼チェーンなど強敵が参戦、高付加価値戦略に?
ここに追い討ちをかけるように増加しているのが「インネパ」だ。
これはネパール人を中心とした店主が営むインドカレー屋の総称。店にはエベレストの絵などが飾られていて、メニューは税込800円のバターチキンカレー。それにナン食べ放題が付いている……なんて店を見たことがある人も多いのではないだろうか。それが「インネパ」だ。
東京や大阪といった大都市圏だけでなく、地方のショッピングモールのフードコートなどでもインネパは増加しているが、ビザ要件の緩和などを背景にここ20年で激増している(これらは室橋裕和『カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」』に詳しい)。
その数の多さと圧倒的な安さで、単一チェーンではないものの、あたかもチェーン店のように全国に増殖している。CoCo壱番屋が創業したときには考えもつかなかったライバルだ。
このようにカレー業界の中ではシビアな価格競争が起こっており、大衆的な店としてポジションを取っていたCoCo壱番屋にとっては、うかうかできない状態が続いているわけだ。
「値上げ」はリブランディングの現れか
このように「価格競争」のラインに乗ると、かなり厳しい戦いを迫られるのが現在のカレー業界である。価格でなければ、やはり「内容」で勝負するしかなくなる。今流行りの言い方でいえば「高付加価値」の商品を送り出していく、という戦略が必然的に必要になっていくだろう。
事実、CoCo壱番屋の決算説明会資料(2025年2月期中間決算)を見ると、マーケティング戦略の1つとして「高付加価値の商品提案」という文言が掲載されている。
他のカレー店と同じような普通のカレーで勝負するのではなく、具材やトッピング等含めてより「高くてもお金を払いたくなる」商品ラインを目指しているわけだ。
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一方、CoCo壱番屋の強みは地方・郊外にもくまなく出店をしていることである。それゆえ、気軽に少し特別なカレーが食べられる店として、他のカレー店との差別化を図っているのかもしれない。
狙ったのか、自然とそうなったのかはわからないが、いずれにしてもCoCo壱番屋はこれまでとは異なる道を模索している(というよりも、牛丼チェーンのように安く提供することは難しいであろう以上、そうなっていくしか生き残る道はないような気もする)。
つまり、単なるインフレに伴う値上げというより、群雄割拠のカレー業界における「高付加価値カレー」へのリブランディングを起こしているともいえるのだ。
どの企業でもそうだが、リブランディングの過程は時に消費者のイメージとのズレを起こしつつ、じわじわと起こる。今回の客足減は、そうしたリブランディングにおける成長痛だと見ることができるだろう。
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