大人世代にもオーディション番組が"刺さる"ワケ ノノガにタイプロ、「推し活」が人気を後押し
たとえば、「タイプロ」現象を特集したニュース番組では、30代の女性が「この歳でこんなにハマるとは思いませんでした」と語っていた。子どもと一緒に見ているうちに好きになったという40代の女性もいた(TBS『Nスタ』2025年2月17日放送)。
「ノノガ」も同様だ。SNSなどでは、「初めてガールズグループのファンになった」「娘と一緒に見ているうちに自分も夢中になってしまった」「40代で初めてファンクラブに入った」という大人世代の投稿があふれている。
ネット配信と視聴者参加型が主流に
「タイプロ」と「ノノガ」に限らず、アイドルオーディションが近年盛んだ。加えて昔と比べ、いろいろと様変わりもしている。
かつては山口百恵やピンク・レディーを輩出した『スター誕生!』(日本テレビ系、1971年放送開始)やモーニング娘。を生んだ『ASAYAN』(テレビ東京系、1995年放送開始)のように、オーディションはテレビで見るものだった。それがいまは、ネット配信主流になっている。
「タイプロ」はNetflixでの配信。「ノノガ」はテレビでダイジェスト版も放送されたが、メインはYouTubeやHuluでの配信だった。他のオーディションも、いまやネットが主でテレビが従というケースが多い。
この流れは、NiziUを生んだ『Nizi Project』(2020年)くらいから明確になった。「ノノガ」にもかかわったSKY-HIの主宰でBE:FIRSTを生んだ『THE FIRST』(2021年)もそうだった。ネット配信がメインで、そのダイジェスト版をテレビでも流すというスタイルである。
テレビからネット配信への移行は、オーディションへの感情移入をより強固にしたと言えるだろう。
ネット配信であれば、途中からでもまとめ見によって追いつくことが比較的容易だ。パソコンだけでなくスマホからも視聴できて、テレビよりアクセスしやすい面もある。
一気に通して見れば、オーディションの流れがよりリアルに感じ取れるという利点もあるし、感動的な場面を繰り返し見ることもできる。どんどん気持ちが入り込んでいくわけである。
ネットの存在によって、オーディションへの視聴者参加の流れも加速した。
代表的なのは、『PRODUCE 101 JAPAN』シリーズ。プロの審査員は存在せず、「国民プロデューサー」と呼ばれる視聴者のネット投票によってデビューメンバーが決まる。すでに3回オーディションが開催され、JO1、INI、そしてME:Iが生まれている。
ちなみにME:Iが誕生した『PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS』の投票数は、延べ約9000万票に達した。ひとりが複数回投票できるシステムではあるが、それにしても驚異的な数字である。
もともとオーディションは、候補者たちが懸命に努力する姿に視聴者は感情移入しやすい。とりわけ課題が設定され厳しい競争が繰り広げられる「サバイバルオーディション」と呼ばれる方式では、候補者が必死で取り組む姿に応援したくなる気持ちもさらに募る。そんな視聴者が抱く強い思い入れを投票という仕組みで取り込んだのが、『PRODUCE 101 JAPAN』ということになる。
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