東大卒エリートが「60歳で落語家に転身」した結果 自ら「ベンチャー落語家」と名乗る納得の理由

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きっかけはある企業の懇親会で落語を披露した謝礼としてもらった1万円だった。

「これがとても嬉しかった。毎月自動的に振り込まれる給料とは異なり、まぎれもなく今、自分が披露した芸でお客様が楽しんでくれた対価だと。この生で感じる手応えがいいなと思い、落語を生業にしようと決意しました」

妻は収入面以上に退職して時間を持て余すことを心配していたが、落語に打ち込むならと理解してくれたという。趣味にとどめず、仕事にしたのは、「仕事としてお金をいただく以上は責任が伴う。お客様に価値を提供するために、本気で稽古することで技を磨きたかったから」だ。

落語を覚えるのはまったく苦にならないという(撮影:尾形文繁)

新たに生み出した落語の「ジャンル」

そんな豆生田さんは自らを「ベンチャー落語家」と名乗る。それは落語をツールとした独自のビジネスを生み出しているからだ。主軸事業の1つが、37年間の会社員経験を生かして企業の歴史を創作落語で伝える「落語DE社史」。自ら経営者に取材し、その企業だけのために作るオーダーメイド落語だ。

着想のきっかけは、俳優の長男が某企業の創業者ストーリーを演劇にする依頼を受けたこと。コストをかけて分厚い社史を制作しても、読まれないこともある。そこで、落語にすれば興味をもって聞いてくれるかもしれないとひらめいた。

事前に依頼を受けた企業の資料を読み込み、2時間程かけて経営者に話を聞く。資金繰りに行き詰まったり、改革で社員から反発を受けたりといった苦労話に共感できるのは、銀行員や社長としての経験が生きている。

社史落語の各社社史と創作時のメモ(写真:豆生田さん提供)

インタビューの際は、商品やサービスの内容だけでなく、その背景や人の思いを掘り下げる。窮地に陥った企業を支援した取引先や金融機関があれば社名を盛り込む。ストーリーをわかりやすく伝えることで、企業の後押しにつながればとの思いからだ。

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