東大卒エリートが「60歳で落語家に転身」した結果 自ら「ベンチャー落語家」と名乗る納得の理由

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建設会社の落語では、地盤に打ち込む杭と杭打ち機を擬人化し、身振り手振りを交えて基礎工事の重要性を面白く伝えた。切断機メーカーの落語では、「何でも切れるが、切れないのは客と取引先との輪」と締めて喜ばれたという。

社史落語は笑いを誘う落語だけではない。ときには、痛ましい出来事も織り込む。陸送会社の落語では、過去に起こした事故の話を入れた。社長は被害者の墓参りを続けるとともに、事故原因を分析し再発防止に努めた。その真摯な姿勢に心を打たれた遺族から、最後には法事に出席してほしいと言われたそうだ。

「『我が社の宝になった』という言葉をかけられたり、周年記念で1度ご依頼いただいた企業の方から『20周年もお願いしたい』と言われたり、お客様に喜んでいただけることが嬉しい」

社史落語以外にも、海外勤務で培った語学力を生かした「英語落語」や、オペラと落語を融合した「オペラクゴ」など、独自のサービスで落語の裾野を広げている。

ドッグランで犬語でやったら犬が実際に寄ってきた(写真:豆生田さん提供)

個人で活動するようになってよかったこと

とはいえ、長い落語を覚えるのは大変ではないのか、と尋ねると、「楽しい」と豆生田さんは笑顔で即答。落語家になってから物事への探求心も高まったという。

「噺を伝えるためには、『理解すること』が大事。社史落語では専門用語の意味や機械の仕組みなどを詳しく調べて理解する。難しい言葉をそのまま使うのではなく、例え話を用いて分かりやすく説明したり、やさしい言葉に言い換えたりするように努めています」

組織の一員から個人で活動するようになってよかったことは、会議がない。稟議もいらない。自分の責任で自由に物事を決められる点だという。「自分の代わりがいない」との責任感から、より体調管理に努めるようにもなった。また、人とのつながりをより一層大事に思えるようになったという。

「落語に関しては自然体で貪欲ですね。会社員の頃と比べ、ビジネスに対してより積極的になりました。また、以前にも増してポジティブ度が上がりましたし、人前に立つ程よい緊張感があるからか、若返ったと言われます(笑)」。

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