ソフトバンク、「AIに異次元投資」で浮上する焦点 自信満々の孫会長、OpenAIとも急接近
怒涛の発表で、いくつか気になる点も残る。まず、ソフトバンクグループの金策だ。
現預金や流動資産に含まれる短期投資などを合わせた同社の手元流動性は、2024年9月末時点で3兆8000億円。同社が重視する指標の「NAV(ネット・アセット・バリュー=保有株式価値−純負債)」は29兆円に上る。
もっとも、AI戦略でシナジーを最大化しようというこのフェーズで、NAVの大きな割合を占めるアームやソフトバンクといった重要な事業会社の株式を大規模に売りに出すわけには当然いかない。Stargate Projectが掲げる約75兆円という数字について、アメリカの実業家であるイーロン・マスク氏がSNSで「彼らは実際はお金を持っていない」と指摘する一幕もあった。
今後は2023年9月のナスダック上場で流動性が高まったアーム株を活用し、ソフトバンクグループの持ち分を担保にした借り入れなど、あらゆる手段で資金を集めることとなりそうだ。孫会長はアルトマン氏とのトークセッションで「私たちの共通の友人であるイーロン・マスクは『金はあるのか』と。でも、絶対実現させると言っておく。われわれは銀行ではないが、”ソフト”バンクだ」と笑い飛ばして見せた。
OpenAIとの関係はどこまで深化?
OpenAIとの関係性の深化も焦点となる。赤字が続くとみられるOpenAIは従前、マイクロソフトを最大のスポンサーとして、資金とAI開発のカギを握る高度なクラウドインフラを確保し、同社の法人顧客網を生かした事業機会を得てきた。
![ソフトバンクグループの孫会長と、OpenAIのサム・アルトマンCEO](https://tk.ismcdn.jp/mwimgs/e/2/570/img_e2b673e20184d6dcd74cc4c9ced52513642458.jpg)
2023年11月に勃発したアルトマン氏のCEO解任騒動に際しても、マイクロソフトの首脳陣は連帯の表明で収束に一役買い、オープンAI内で最上位の権限を持つ「理事会」に議決権のない取締役を送り込む(その後は離脱)など、一蓮托生の雰囲気が漂っていた。
一方のソフトバンクグループは数年前、OpenAIのスポンサー選びでマイクロソフトと天秤にかけられ、最終的に1兆円の投資機会を逃した経緯を持つ。2024年にようやく傘下のベンチャーキャピタルであるソフトバンク・ビジョン・ファンドからの5億ドル出資にこぎ着け、ここ数カ月で事業面での連携を急速に深めた格好だ。マイクロソフトからOpenAIの最重要パートナーの座を奪取するまでになるのか、追加出資や連携強化の行方に注視が必要だろう。
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