日産・ホンダ「統合破談」で迎える三菱自の分岐点 単独路線の限界を認識、三菱グループに決定権
もっとも、客観的な三菱自の実力は決して高くない。販売台数80万台強で、日本の乗用車メーカーとして最下位だ。
業績にも陰りがみられる。2月3日には2025年3月期の営業利益見通しを35%下方修正した。主力の東南アジアや北米など幅広い地域で販売が下振れするほか、販売費用が期初計画よりも約200億円近く膨れ上がることが原因だ。
営業利益率の見通しは4.5%と、前期比で2.3ポイント悪化する。三菱自は2026年3月期の営業利益率を7%とする中期経営計画目標を掲げているが、「当初想定されていなかったマイナス要因が大きく影響している」(加藤社長)として達成が難しくなっているという認識を示した。
厳しい状況を打破するために、三菱自は「自社の強み」を磨きあげる動きを加速させている。
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「らしさ」の再定義でブランド強化
1月下旬には北海道にメディアを招いた雪上試乗会を実施。長年培ってきた4駆の制御技術や車両の耐久性、電動化技術を自社の強みとしてアピールした。加藤社長は「価格やコストの競争が厳しい領域で勝負をしても将来にプラスにならない。他社と差別化をして、ニッチな需要を取り込んでいく」と強調する。
2019年に社長就任以降、「三菱自動車らしさ」を求める会議体を立ち上げた加藤社長。「らしさ」の代表例が、鉱山や山道などの悪路走破性に優れるピックアップトラック「トライトン」。東南アジアを中心に展開してきたが、2024年には日本市場にも投入。498万円からと決して安くはないが、こだわりの強いユーザーに人気を博している。
アウトランダーPHEVや軽自動車でも内外装のデザインや機能、性能に特徴を持たせたクルマづくりを重視する。かつての「パジェロ」のような趣味性の高さやアウトドアイメージといったブランド力の再構築を図ろうとしている。
現中計では重点地域を東南アジアやオセアニアとしてきたが、足下では営業利益の5割を北米で稼ぐ。このため三菱自では北米に欧州や日本も加えた先進国市場をもう一度力を入れていく考えだ。そうすることで「東南アジアを軸にグローバルで安定的に稼げる体制にしたい」(三菱自幹部)。
三菱自は2009年に軽EV「i-MiEV(アイ・ミーブ)」を発売したEVの先駆者の1社だが、その後は「日産サクラ」と兄弟車の「eKクロス EV」など数車種を出した程度。当面の電動化戦略ではPHVやハイブリッド車(HV)で戦う方針だが、各国の規制や需要を踏まえるとEVの再強化は避けて通れない。
電池やソフトウェアへの投資競争に勝ち残っていくかは三菱自にとっても難題だ。加藤社長はかねて「我々単独ですべてをやるには限界がある。頼るべき所は頼りたい」と話してきた。
日産の傘下であり続けるのか、新たなパートナーを求めるのかーー。販売台数80万台強の小規模メーカーは生き残る道をどこに見出していくのだろうか。
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