人権団体が「福島・郡山調査報告書」を発表、深刻な実情と県による“安全キャンペーン”を批判
人権活動団体の「特定非営利活動法人ヒューマンライツ・ナウ」(阿部浩己理事長=神奈川大学法科大学院教授、東京)はこのほど、福島第一原子力発電所事故による地域住民の生活への影響を調査した「福島・郡山調査報告書」(→こちら)を発表した。
福島市民や郡山市民の深刻な実情について詳細な調査報告をまとめるとともに、政府や福島県、福島市や郡山市などに対して、精密な健康調査や学校給食の安全確保など、地域住民への包括的な支援を実施するように求めた。
人権団体による福島第一原発事故に関する同種の調査や勧告は例がなく、原発事故対策のあり方に警鐘を鳴らす内容となっている。
32ページにのぼる報告書をまとめるに際して、ヒューマンライツ・ナウでは2011年11月26、27日の2日間にわたって、福島市および郡山市での現地視察や住民、教職員、児童関係施設職員、現地支援NGOなどへのヒアリングを実施。住民の声を報告書で詳しく紹介している。
報告書では放射線被ばくへの不安感を強める住民の声や、半強制的に参加を迫られている除染作業の実態、不十分な学校給食の安全性確保などについて、克明に記されている。
ヒューマンライツ・ナウでは、「福島県では『安全キャンペーン』が強力に進められる一方で、放射線被ばくに懸念を抱く住民が孤立化させられている」(伊藤和子事務局長=弁護士、右写真)と指摘。その一方で放射能防護や自主避難への支援がきちんと行われていないことを問題にしている。
ヒューマンライツ・ナウは政府に対して、「公正で精度の高い放射線量の測定を網羅的に行うこと」や、そのうえで「避難地域の再検討を行うこと」などを勧告。福島県に対しては、「『県民健康管理調査』検討委員会の人選の再考」、福島市や郡山市には「住民の意に反して、危険を伴う除染活動に駆り立てないようにすること」などを求めている。
ヒューマンライツ・ナウでは、東日本大震災発生から1年後の3月11日前後に、ニューヨークで大震災および福島第一原発事故に関する写真展開催を計画。いわき市でも住民生活に関する調査を検討しているという。
(岡田広行=東洋経済オンライン)
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