中国の自動車市場では、過去数年間でエンジン車からEVやPHV(プラグインハイブリッド車)へのシフトが急速に進み、車載電池の需要が爆発的に増加した。その過程では、最大手のCATLでも需要に供給が追いつかず、競合メーカーのシェア拡大を許した時期があった。
特にリン酸鉄系の電池では、BYDが(独自技術で電池の積載効率を高めた)「ブレードバッテリー」を武器に市場シェアを伸ばし、2023年にはCATLを抜いて一時首位に躍り出た。
しかしCATLの反撃は素早かった。同社は2023年9月、超急速充電に対応したリン酸鉄系の新型電池「神行超充電池」を発表。さらに蓄電システム用のリン酸鉄系電池など新製品を次々に投入し、シェア首位の座をBYDから奪い返した。
高い利益率への「恨み言」も
とはいえ将来に目を向けると、CATLが現在の強さを維持するのは簡単ではなさそうだ。ヨーロッパやアメリカの自動車市場では、2024年に入ってからEVシフトの勢いが大きく低下した。
中国市場でも(電池を大量に搭載する)EVの販売の伸びが鈍化し、(電池搭載量がEVより少ない)PHVの人気が高まっている。こうした市場の変化を受け、車載電池のグローバル需要は(少なくとも短期的には)伸び悩むと見られている。
また、CATLの取引先である自動車メーカーや電池部材のサプライヤーなどからは、同社の高い利益率に対して不満の声が上がっている。自動車メーカーの多くは(完成車の)価格競争のエスカレートで赤字販売を余儀なくされ、部材メーカーはCATLから(バイイングパワーを背景にした)厳しいコストダウン要求を突きつけられているからだ。
「EV関連業界の利益はCATLにほとんど持っていかれた」。財新記者の取材に応じた電池部材メーカーの関係者は、そんな恨み言をこぼした。
リン酸鉄系電池はこれまで中国メーカーの独壇場だったが、ここにきて海外メーカーの巻き返しも始まった。LGエナジーソリューションや日本のトヨタ自動車は独自のリン酸鉄系電池の量産準備を進めており、CATLからの市場シェア奪取を狙っている。
(財新記者:安麗敏)
※原文の配信は1月22日
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