「トランプ関税」発動なら原油価格はどうなるのか 価格高騰か、それとも生産増加で急落か
原油先物市場の不透明感が増している。NY(ニューヨーク)の代表的指標であるWTI原油先物価格は、昨年12月半ばあたりまでは1バレル=60ドル台後半から70ドルにかけてのレンジ内でのモミ合いが継続、世界的な景気の減速や需要の伸び悩みに対する懸念が大きな重石となってきた。
だが、その後、クリスマス休暇に入り始めたあたりから、急速に騰勢を強めた。当初は「参加者が少ない中での、年末年始に向けたポジション調整の動きによる一時的なもの」などと見られていたが、2025年の1月以降も買いの勢いは衰えず、あっという間に一時1バレル=80ドル台を回復するまでに値を切り上げる格好となった。その後も、アメリカのドナルド・トランプ大統領の関税発動をめぐって乱高下している。
バイデン前政権が残した追加のロシア制裁で乱高下
原油価格が一時80ドル台まで高騰した背景にあるのは、地政学リスクの高まりに伴う供給不安だ。
今回の場合は「アメリカの追加制裁によってロシアの輸出が大幅に落ち込む」との懸念が浮上したことによる部分が大きい。1月10日にアメリカのバイデン前政権がロシアに対して打ち出した追加制裁では、これまで「影の船団」と呼ばれ、ロシアへの制裁逃れの手段として利用されていたタンカーも、制裁の対象に加えることが明らかにされた。
国際エネルギー機関(IEA)のレポートによると、新たに制裁対象に加えられたタンカーは約160隻に上り、これらは2024年に日量160万バレルものロシア産原油を輸送していたという。これらの輸送量はロシアの海上輸出の約5分の1に相当するとされ、制裁によって行うことができなくなれば、同国のエネルギー輸出にかなりの混乱が生じるとの見通しを示している。
昨年12月のコラムでは、「需要の伸び悩みや、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなど非OPECの有力国で構成するOPECプラスの増産の可能性が引き続き相場の上値を押さえそうだが。相場急騰の可能性があるとすれば、地政学リスクの高まりだ」という見通しを示していたが、まさにそうした強気のシナリオが現実のものになった。
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