3回の「初代大統領」を務めたモンゴル人政治家 モンゴルの移行期を背負ったオチルバト大統領の軌跡

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オチルバト氏自身のキャリアとモンゴルの発展のシンクロニシティ(共時性)を本人が十分に自覚しており、「天の時」を生きた人であることが了解されよう。

以上のように、オチルバト氏は社会主義時代を通じてすでに資源開発やその利用部門、さらには輸出部門をつかさどる中枢にいて人民革命党の要職にあった。にもかかわらず、1993年の大統領選では野党のモンゴル民主連合から立候補したため、「日和見」と呼ばれるようにもなった。

それでも見事に当選を果たしたのは、こうしたインタビューにも表れているように、その実直な人柄にあるだろう。「飾り気のない人」として親しまれてきた。

モンゴルの屋台骨産業を一貫して担った

と同時に、モンゴル国の屋台骨とも言うべき鉱工業を一貫して担ってきたことが、イデオロギーを問わず、彼に揺るがぬ地位を与えたように私には思われる。

2025年現在もなお、モンゴル国の経済を支えているのは鉱工業部門である。モンゴルの発展における礎を築いたポンソルマーギーン・オチルバト氏に、心から哀悼の意を表します。

小長谷 有紀 国立民族学博物館名誉教授

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こながや ゆき / Yuki Konagaya

文化人類学者。京都大学文学部在学中の1979年に、日本人女性として初めてモンゴル国立大学に留学。京都大学大学院文学研究科満期退学。国立民族学博物館教授、同館民族研究社会研究部長などを務める。国際モンゴル学会会長。2026年3月開学の武雄アジア大学(仮称)学長に就任予定。

著書に『人類学者は草原に育つ:変貌するモンゴルとともに』(臨川書店、2014年)、『モンゴルの二十世紀:社会主義を生きた人々』(中央公論新社、2004年)など多数。

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