東京女子医大、"女帝"が残した「負の遺産」の実態 「女カルロス・ゴーン」が引き起こした機能不全
岩本元理事長は、人事課や経理課、建築設計室などを束ねる経営統括部を新設。その担当になった。そして昇給の凍結や賞与の減額など人件費の削減を中心に、徹底したコストカットを断行する。
2015年度に基本金組み入れ前収支差額(純利益に相当)が37億円の赤字だったが、2017年度には6億円の黒字に回復した。だが、前出の元経営幹部は否定的だ。
退職者が続出
「経営再建を果たしたと岩本先生は自画自賛したが、実際は人件費を極限まで切り詰めた、見せかけの黒字化。だから『女カルロス・ゴーン』と揶揄された。給与は大学病院の中で最低ランクだったのに、昇給が止まり賞与も減額され、退職者が続出した」
女子医大で経営者としての地位を築くと、2019年に理事長のポストを手に入れる。前任理事長を追い出しての就任で、学内での発言力は絶対的なものになっていた。
だが、無理なコストカットのツケが回ってくる。医師や看護師が足りず、入院患者の受け入れを制限せざるをえなくなったのだ。
2020〜2022年度はコロナ補助金によって黒字を維持していたが、実質的に赤字体質が定着。「職員の減少→病床稼働数の減少→患者の減少→収益悪化」という負のスパイラルに陥っていた。2023年度の許可病床数は1190だが、稼働病床数は752にまで落ち込んでいる。
プロポフォール事故を調査した第三者委員会は、再発防止策として小児集中治療室(PICU)の設置を提言した。ただし専門医が少ないために、PICUの実現は容易ではない。カナダの大学病院に勤務していた日本人専門医を招聘することになった。
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