「トランプ再び」を機にアメリカ信仰からの脱却を 「グローバル化の終わり」の先にある2つの方向

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もちろん寿命の長短ということが社会の良し悪しを判断する絶対的な基準とは言えないが、ある国ないし社会、あるいはそこでの人々の豊かさや「生活の質」を評価する際の、重要度の高い指標の1つであることは確かだろう。

そしてアメリカという、もっとも「豊か」と思われている国において、人々の平均寿命が相当低いという事実は、アメリカという国ないし社会のもつ病理や矛盾を象徴的に示していると私には思えるのである。その背景には格差や貧困、暴力、公的医療保険の未整備といった主に低所得層に関わる問題のみならず、強い競争圧力やストレス、不安等から帰結するさまざまな心身の不調や疾患という、高所得層までを含む要因が働いている(リチャード・ウィルキンソン他『格差は心を壊す』東洋経済新報社参照)。

こうした点を含め、トランプ政権が再び発足した今こそ、アメリカという国ないし社会のもつ問題性を日本はもっと認識し、上記のような「アメリカ信仰」的な意識・価値観から脱却あるいは卒業していくべきものと私は考える。

なぜなら先ほど指摘したように、トランプ政権とは「アメリカ」という社会の特質をもっとも“純粋”に反映した政権と言えるからである。

アメリカとの関係性を相対化する

ところで、アメリカ社会のもつ問題性を日本はもっと認識していくべきという主張に対しては、“いやそうは言ってもアメリカは経済面において日本の最重要パートナーであり、その社会のあり方に問題があろうとなかろうと、日本にとっての重要性に変わりはない”という意見が当然予想される。

これは確かにその通りの面があるが、しかしここで見落としてはならないのは次のような事実関係である。すなわち折にふれて話題にもなってきた点だが、日本の主要貿易国の推移を見ると、

・1990年 ①アメリカ(31.5%)、②ドイツ(6.2%)、③韓国(6.1%)
・2000年 ①アメリカ(29.7%)、②台湾(7.5%)、③韓国(6.4%)
・2020年 ①中国(22.1%)、②アメリカ(18.4%)、③韓国(7.0%)

という具合に、輸出総額に占めるアメリカの比重はかなりの割合で低下傾向にある(日本貿易会『日本貿易の現状』)。

また近年伸びが大きい「アジア」という括りで見ると、日本の輸出全体に占めるアジア諸国のシェアは1990年の31.1%から2023年の57.3%へと大幅に増加しており、この傾向は(インドなどを考えると)今後さらに進んでいくだろう。

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