「トランプ再び」を機にアメリカ信仰からの脱却を 「グローバル化の終わり」の先にある2つの方向

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すなわち第2次世界大戦後の日本はアメリカの占領下から出発し、その後の経済発展を遂げてきたという歴史的経緯や、20世紀という時代においてアメリカという国が世界における覇権国家でもあったことから、特に高度成長期を生き抜いてきた世代――いわゆる団塊世代がその典型――を中心に、とにかくアメリカという国は(その物質的な“豊かさ”に象徴されるように)理想的な国であり、また日本にとっての「モデル」となる国であるという意識や感覚が深く日本人の意識の中に浸み込んでいった。

「平均寿命」に関する事実

ここであえて個人的な述懐を世代論的な視点とともに述べるならば、私は就職した頃(1980年代半ば)に“新人類”と呼ばれた世代に属するが、私前後より若い世代になってくると、団塊の世代など上の世代にきわめて顕著だった「アメリカ(ないし欧米)ー日本-アジア」という強固な“序列意識”――アメリカがもっとも“進んだ”国であり、日本はそれに近づきつつあり、韓国や中国など他のアジア諸国ははるかに“遅れた”国であるといった認識――は徐々に薄まり、もう少しフラットで中立的な認識が広がっていったと言えるだろう。

私自身に関して言えば、先ほどもふれた3年間の滞在経験から、アメリカにおける尋常ではない格差や貧困、都市の中心部の荒廃、頻発する暴力や犯罪、人々の不安やストレス、公的医療保険などの社会システムの不備等々を目の当たりにし、アメリカが“すばらしい国”ないし“モデル”とはおよそ程遠い国であり、むしろ多くの面において深い「病理」を抱えた国あるいは社会であることを強く感じてきた。

しかし以上のような点を踏まえてなお、全体として見るならば、日本あるいは日本人の間に「アメリカ信仰」的な認識や感覚が残っているのは確かなことだろう。

ここで、先ほど述べた「アメリカが“すばらしい国”ないし“モデル”とはおよそ程遠い国である」という点を示す一例を挙げてみよう。それはアメリカないしアメリカ人の「平均寿命」に関する事実である。

多くの人々にとっては意外な点かと思われるが、健康に関する基本的な指標である平均寿命を見た場合、アメリカのそれは78.5歳で、先進諸国の中でもっとも短く、世界全体の中でも40位で、これはチリ(80.7歳、31位)やペルー(79.9歳、32位)、コロンビア(79.3歳、34位)等よりも低い水準なのである(WHO, World Health Statistics 2022)。

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