「サツドラ」がシェアオフィスに懸ける深い事情 人口減に向き合うドラッグストアの事業とは?
会場には投資会社や新規事業開発の担当者などが集まった。講演の後の座談会では羽幌町の話に興味を持った人が立花さんと意見を交わし、地域の活性化に向けた具体的な提案や協力案もいくつか出された。
都内の投資会社に勤める40代の男性は「北海道は半導体や脱炭素の分野で海外からも投資されているが、当社は人口減少など社会課題の解決につながることに投資したい。現地の方と意見交換ができてイメージが膨らんだ」と話した。
立花さんは「町の人口は減っているが、新しいことにチャレンジする40代や50代の人が増えている。羽幌町のよいところを道外に伝えて、町の将来につなげたい」と話し、手応えを感じていたようだった。
人口減少で縮む市場、迫られる事業の多角化
サツドラはなぜこうしたイベントを支援しているのか。同社は北海道でドラッグストアなど200店舗を展開する。ほかは沖縄の3店舗のみで、地域密着の経営が特徴だ。
2024年5月期の売上高は955億円、営業利益は13億円で、売上高・営業利益はともに過去最高を更新した。今年度は売上高が初めて1000億円に到達する見通しだ。
しかし、店舗数は2019年をピークに減少。直近の4年間は200店前後で横ばいだ。背景には北海道の人口減少がある。2020年から2025年にかけて北海道の人口は約20万人減少すると推計されている(国立社会保障・人口問題研究所)。
今後は出店可能な地域が限られ、次第に経営は難しくなっていくと見込まれる。そうした危機感から、2020年に「EZOHUB SAPPORO」(札幌市)をオープン。人口減少や過疎地域の問題に貢献できる新しい事業の模索を進めてきた。
事業を担当するサッポロドラッグストアーの満留真章マネジャーは「人口減少によって小売業だけでなく、北海道のさまざまな産業や自治体の運営が難しくなっていく。道内の企業や自治体が集まり、地域に新たな需要や雇用を創出するアイデアを生み出す場所が必要と考えた」と話す。
サツドラはEZOHUB事業に手応えを感じている。EZOHUB SAPPOROは2024年に200件以上のイベントや会議が開かれた。会員同士の間でベンチャー企業への投資や協業に関する動きも出始めている。
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