その息苦しさは日に日に強くなり、ついには“交際終了”を出すことにした。だが、交際終了を出すと、失ったものの大きさに、また落ち込む自分もいた。
「もう、あんなに私のことを大切に思ってくれる人は、現れないかもしれない」
だが、失ったものは返ってこない。気を取り直してまた婚活を始め、そこから半年後にお見合いしたしんじ(42歳、仮名)と仮交際を経て、真剣交際に入った。
その途端に、ひさおのときと同じような心理状態に陥り、結婚することがどんどん苦しくなっていった。そして、こちらもまた真剣交際を終了させた。
私は、どうしてこんな人間なの?
しんじとの真剣交際を終了させたときに、きみえはかなり落ち込んだ顔で筆者に言った。「これで2度目。私は、どうしてこんな人間なのでしょうか」。
何かを決断しようとすると、決められない。“優柔不断”という言葉があるが、物事が決められない人というのは、決めようとすると不安になってしまう心理メカニズムが働く。
なぜ不安になるのか。それは、育ってきた背景にその要因の1つがあるといわれている。きみえは、幼い頃から勉強ができる優等生だった。大学も名の通った私大を卒業しており、有名メーカーに就職していた。
「母親は優等生の私が好きでした。テストの成績が悪かったり、何か失敗をしたりすると叱られたり、がっかりした顔をされたりするので、いつも母にほめられるように生きてきたんです」
入会面談のときには、こんなことも言っていた。おそらくこの生育環境が、「完璧でなければならない」という気持ちを無意識のうちに育て、失敗は許されないという心理状態を生み出したのだろう。
心理学者のエリク・エリクソンは、「幼少期に厳格な親のもとに育つと、自分の決定に対する信頼感が育たず、将来的に不安を感じやすくなる」と心理社会的発達理論の中で説いている。
おそらく母親の前でいつもいい子でいようとした生育環境が、「完璧でなければならない」という気持ちを無意識のうちに育てて、「未来に失敗は許されない」という心理状態を生み出しているのだろう。
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