「日本との関係も…」USスチール買収阻止の代償 政治的判断を下したバイデン政権に厳しい声
その一方で、トランプ大統領は先月、日本のテクノロジー企業であるソフトバンクグループが約束した、今後4年間でテクノロジーと人工知能(AI)に焦点を当てた1000億ドルの対米投資を歓迎している。
クリス・デルジオ下院議員(民主党)の選挙区には鉄鋼労働者が多くいるため、USスチールの売却が提案されたときから反対していたが、この決定は国内製造業の雇用を守るものだと3日にソーシャルメディアで述べた。
「当初から、この会社を動かしている労働者は交渉のテーブルにつくべきだったーー彼らの生活は天秤にかけられていた」
発表当初から政治的反対に直面してきた
日鉄による入札は、2023年12月に発表された瞬間から政治的反対に直面した。オハイオ州のシェロッド・ブラウンや、ペンシルベニア州のボブ・ケーシーといった民主党の上院議員や、現在次期副大統領であるオハイオ州選出のJ.D.バンス上院議員は、鉄鋼生産と雇用の喪失を防ぐため、売却案を見直すようバイデンに求めた。ブラウン、ケーシーの両氏は昨年11月に共和党の挑戦者に議席を奪われた。
昨年のクリスマスの少し前、バイデン政権は議員によるこうした懸念に耳を傾けたようで、アメリカ合衆国国家経済会議のラエル・ブレイナード理事は、この取引は「国家安全保障とサプライチェーンの信頼性への潜在的影響という点で、重大な精査に値すると思われる」という声明を発表した。
USスチールの株主は4月にこの取引を承認したが、大統領選挙が近づくにつれ、実現の可能性は薄れていった。
1901年に設立されたUSスチールは、世界的な金属市場のダイナミクスの変化や、急速に進化するテクノロジーの中で、長年にわたって財務上の苦境に直面してきた。
同社の製品はシカゴのウィリス・タワーやニューヨークの国連ビルなど、アメリカで最も有名な橋や建物の建設に使用されてきた。1940年代のピーク時には34万人の従業員を雇用していたが、現在は全体で約2万人、そのうち約4000人がペンシルベニア州で働いている。