「日本との関係も…」USスチール買収阻止の代償 政治的判断を下したバイデン政権に厳しい声
政府によるインフラ投資が需要を喚起し、供給不足が重なったことから始まった鉄鋼市場の後追い景気は、世界的な景気減速が懸念される中、冷え込む兆しを見せていた。
2023年、USスチールのライバルであるオハイオ州を拠点とするクリーブランド・クリフスが、同業他社を買収するため、未承諾のオファーを出した。これが入札合戦の発端となり、日鉄が勝利した。
アメリカでは鉄鋼需要拡大が見込まれているが…
世界第4位の鉄鋼メーカーである日鉄は、USスチールの買収によってさらに規模を拡大し、アメリカ市場へのアクセスを獲得する機会を得た。政府がインフラや気候変動対策技術に大規模な投資を行っていることから、アメリカは今後数年間で鉄鋼需要が拡大する成長市場と見られてきた。
しかし、全米鉄鋼労組はすぐにこの合意に反対を表明。同労組は、日鉄の経営陣に不意を突かれたと主張し、日鉄が同労組の契約を守り、労働者の年金を保護する可能性は低いと主張した。日鉄側は、既存の契約を守るとしている。
昨年初め、トランプはUSスチールをアメリカの手に残す必要があると述べた。トランプは、最初の任期中にメキシコ、カナダ、ヨーロッパなどの同盟国からの外国産鉄鋼輸入に徹底的な関税を課したが、日本企業によるUSスチール買収を阻止することは、アメリカの産業遺産を守ることだと述べた。
政治的圧力を受けたバイデンは、4月にもこの意見に同調し、USスチールがアメリカ資本のままで運営されることを主張した。昨年9月のレイバー・デイの週末、バイデンに代わって民主党候補となったハリスは、このメッセージを繰り返した。