「旧ビッグモーターの倒産劇」に映る2つの潮流 中小零細企業の倒産にも増えた「事業存続型」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

そうですね。2020年からコロナ禍に入って、その直後の2021年までは、実は倒産件数は歴史的な低水準にとどまっていました。当初は「未曽有の事態で倒産が増えるのではないか」とみられていましたが、企業に対して45兆円もの資金繰り支援が行われたことで倒産の抑制効果が発揮されました。

ただ、そこから時が経過し、2022年5月を境に倒産は増加に転じています。2024年の11月まで31カ月連続で倒産件数が増加しています。

――今回、帝国データバンクの統計を基に、2024年の主な倒産案件について負債額ランキングを出していただきました。この中で見ると直近でとくに印象的だったのが旧・ビッグモーターのBALMです。内藤さんからみて、どんな案件でしたか?

非常に特徴的な、今の倒産のトレンドを如実に映し出している事例だったと思います。

この会社自体は倒産手続きに入ったのですが、事業や雇用はWECARS(ウィーカーズ)という別の会社に引き継いでおり、残った債務などの負の部分を民事再生手続きで整理する形です。これを当社では「事業譲渡型」「事業存続型」の倒産と呼んでいて、その象徴的なケースだったと思います。

大型の企業で事業譲渡型スキームが取られるのは、皆さんもニュースなどで見聞きすることがあると思いますが、実は中小企業の案件でも最近増えているのがこの「事業存続型」です。

コンプラ違反企業への接し方はより厳格に

――例えばどのような業態でこのスキームが使われていますか?

地方のホテル・旅館などです。伝統のあるブランドや施設などがあって、一定の固定客がいる。ただ、過去に膨らんだ債務が重しになって、経営が苦しくなっている。そこで、倒産手続きに入る前に従業員の雇用やブランドなどの価値ある部分はほかの会社に譲渡し、残った負の部分だけを倒産手続きで処理する。そういうパターンですね。

――旧・ビッグモーターの案件でもう1つ気になったのは、不正が明るみに出てから倒産に至るまで、短い期間で進んだということです。

そうですね。当社では法令違反などが外部に発覚したのちに倒産するケースを「コンプライアンス違反倒産」と分類していますが、その特徴の1つがまさに、不正の発覚から倒産までの期間が短い、というものです。

この背景には、取引先や金融機関がコンプライアンス違反をした企業への見方、接し方をより厳しくしているという事情があります。一般消費者のこうした企業に対する目線がより厳しくなっているため、金融機関の対応もより厳しくせざるをえないというのが実態だと思います。

撮影・編集:昼間將太
井下 健悟 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

いのした けんご / Kengo Inoshita

食品、自動車、通信、電力、金融などの業界を担当、東洋経済オンライン編集部、週刊東洋経済編集部などを経て、2023年4月より東洋経済オンライン編集長。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事