石油化学大再編を阻む壁、エチレン余剰に苦悶
海外勢の台頭による競争力の低下──。日本の石油化学産業が、恐れていた事態に直面した。
石油化学工業協会は1月19日、2011年のエチレン国内生産が前年比4・7%減の669万トンになったと発表した。欧州債務危機を発端とした世界景気の変調を受け、終盤に急失速したのが主因だ。
暦年ベースでは00年以降最低で、リーマンショック後の08~09年をも下回る。実質的な生産能力の約760万トンに対する稼働率は平均86%台、12月単月では81%台にまで落ちた。レジ袋や産業資材など向けに、アジアから汎用的な石化製品の輸入が急増した点も響いた。
中東・中国の設備増強で岐路に立つ国内生産
「先行きは非常に不透明だ」。石化協の高橋恭平会長(昭和電工会長)は吐露する。深刻なのは景気要因だけでなく、数年前から「08年問題」「10年問題」と騒がれてきた構造問題が露呈したことだ。これは、中東勢のアジア侵攻や中国の自生化の本格化により、日本勢がはじき出される国際競争の激化を指す。
「11年のエチレン内需は製品換算で約500万トンと例年並み。が、輸出は150万トン程度と従来から50万~60万トンも減った」と旭化成ケミカルズの坂本正樹社長は分析する。
合成樹脂や合成ゴムなど化成品の基礎原料となるエチレンの国内生産は、長らく内需だけで消化しきれず余剰分は輸出に回っていた。中国などの成長により、輸出は年180万~220万トン程度で推移してきた。