16年ぶり航路復活「ホーバークラフト」進化の実態 静音化や大幅値下げ実現も、残された課題とは

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ただ県外から来る観光客にとっては、大分空港→西大分港と移動してもクルマはなく、「普通に町はずれの港に降ろされただけ」。大分駅までのシャトルバスを準備する方針ではあるものの、西大分港から観光地に直接行けるわけでもない。せめて「西大分港発のレンタカーと組み合わせたプランの発売」「別府・鉄輪方面への路線バスとの接続・待ち環境改善」(最寄りの「春日浦」バス停まで徒歩500m)といった施策を、早期に考えたほうが良いのではないか。

またホーバークラフトの復活そのものが、船体の到着遅れや認可の問題で1年以上も遅れ、訓練中に複数回発生した事故の報告や航海日誌への不記載で、関係者が書類送検される事態も発生。

2024年12月25日には、予定していた年内の定期就航開始を断念すると発表。2025年中の開始を目指すとしている。

事業のスタートとしてはやや不安を感じさせ、県議会でも「事業を任せている県としての責任が感じとれない」「県として当事者意識が薄い」との質問が相次ぐ事態となっている。

今後の監督状況について大分県に対応を問い合わせたものの、期日までに回答はなく「裸傭船(船主が船だけを運航者に貸し出す契約形態)で貸し出しているだけだから」とのことだった。

経済効果は「20年間で614.2億円」?

コロナ禍の前には年間200万人程度であった大分空港の利用者を、2032年には260万人まで増加させるビジョンを大分県は発表している。かつ、世界2カ所でしか乗船できないホーバークラフトを観光資源として位置づけ、「20年間で614.2億円の経済効果」(大分県試算)を見込んでいるという。

ただ、漫然と「世界で2カ所だけです!」と言ってホーバークラフトを運航しているだけでは、経済効果は得られない。「観光資源としてどういった需要があるのか、見学以外ではどんな体験ができるのか」「“乗らずに見るだけ数分滞在”に終わらせないためにはどうすれば良いか」といった部分を考え抜いたうえで、対外的にPRするのは大分県の仕事であろう。今のところ、「復活させてみた」以上のビジョンが見えてこないのが気がかりだ。

いずれにせよ、もうGOサインを出して事業費を投入しており、後戻りはできない。16年ぶりの復活となるホーバークラフトが、事業としての「空港輸送」「観光周遊」で採算ラインを確保し、大分県は予算を投入しただけの経済効果を得られるのか。まずは、来年の定期航路の出足に注目したい。

宮武 和多哉 ライター

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みやたけ わたや / Wataya Miyatake

バス・鉄道・クルマ・駅そば・高速道路・都市計画・MaaSなど、「動いて乗れるモノ、ヒトが動く場所」を多岐にわたって追うライター。政令指定都市20市・中核市62市の“朝渋滞・ラッシュアワー”体験など、現地に足を運んで体験してから書く。3世代・8人家族で、高齢化とともに生じる交通問題・介護にリアルに対処中。著書「全国“オンリーワン”路線バスの旅(既刊2巻・イカロス出版)など

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