16年ぶり航路復活「ホーバークラフト」進化の実態 静音化や大幅値下げ実現も、残された課題とは

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大分県は、新しいホーバークラフトの値下げと運航維持のために、地方の鉄道などでよく行われる「上下分離方式」を採用した。「上」にあたる船の運航は「大分第一ホーバードライブ」に任せ、「下」にあたる船や設備の保有を県が負担することで、運航する側は固定資産税や維持費用の負担を避けられる。

かつ今回は、船体の貸付料約1億8500万円、ターミナルの使用料約5400万円も当面免除(1年ごとに検討)される。完全な民間事業としてホーバークラフト航路を運営するのは限界があり、空港への速達手段を復活させたい大分県が、補助の“お手盛り”で事業者を公募、第一交通産業1社のみが公募に応じたというのが、今回の航路復活の図式だ。

大幅な値下げも当初から議論されており(検討段階では「1500円」だった)、大分県の補助によって採算ラインが下がったからこそ、実現したものだ。

ただし、赤字が出ても補填は行われず、「大分第一ホーバードライブ」は向こう20年間、事業を継続しなければいけない。同社によると、これだけの補助があっても採算は厳しく、すでに11月から運航を開始している観光周遊などを含めて採算ラインを目指すという。

課題は「西大分港の利便性」「安全運航」

見学イベントの様子。ホーバー運航時は、この場所がスリップウェイ(走行路)となる(写真:筆者撮影)

ただし、「最新鋭機種の導入」「値下げ」「公的補助」をもってしても、16年ぶりのホーバークラフト復活には課題も多い。

まず、「大分市側のターミナルの利便性」に難がある。ホーバークラフトが発着する西大分港は、大分の市街地やJR大分駅から2~3kmも離れており、鉄道利用の場合は港への移動が必須となる。無料シャトルバスの運行を検討中ではあるが、乗り継ぎ時間と手間を考えると「バスなら1時間、ホーバークラフトなら30分」というメリットが、相当に薄れてしまう。

そのかわり大分県は、大分港に約450台の「パーク&ライド駐車場」(利用者用の無料駐車場)を整備し、マイカーから乗り継ぐ利用者を積極的に取り込みたい考えだ。

大分に限らず、クルマ社会化が進んだ地方では、港や駅への移動もマイカーに頼ることが多く、近年では北陸新幹線・越前たけふ駅や東北新幹線・くりこま高原駅のように、数百台規模の無料駐車場を併設したうえで、地元の「クルマ+交通機関」利用を獲得するケースも増えている。大分でも同様の「パーク&ライド」施策を取ったといえるだろう。

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