「年金50万円の壁」見直しで高齢社員の立場が激変 役職定年制やシニア社員制度は廃止の方向へ?
一方、制度見直しに批判的な意見もありました。
「65歳を過ぎて、年金と合わせて月62万円も71万円も稼いでいるというのは、そもそも現役時代にもかなり稼いでいた勝ち組でしょ。勝ち組の金満老人への年金を増やしてさらに太らせるって、まったく意味不明です」(40代女性)
「わが社でも最近、人手不足が深刻です。ただ、足りないのは若手・中堅クラスで、高齢者はどの部署でも余っていて、処遇に困っています。これ以上高齢社員が増えても、会社にとっては人件費負担が重くなるし、人事が停滞するし、ろくなことがないように思います」(50代男性)
「高齢者に大盤振る舞いすると、年金財政が悪化し、保険料の引き上げとか現役世代にしわ寄せが来ます。政治家は選挙を意識しているのでしょうが、高齢者ばかり優遇するのは納得できません。もっと現役世代、とりわけ経済的に厳しい子育て世代への支援を充実させてほしいものです」(30代女性)
今回の制度見直しは直接的には高齢者を対象にしたものですが、現役世代に一定の不利益が及ぶことから、世代間闘争を激化させる可能性があります。
高齢者の働き方に変革を起こす可能性
では、もし在職老齢年金制度が撤廃されたら、どういう影響があるでしょうか。「ごく一部の金持ち老人が恩恵を受けるだけで、大きな影響はない」(50代男性)という見方が多いようですが、高齢者の働き方に大きな変革が起こるかもしれません。
現在わが国の企業は、高年齢者雇用安定法によって社員を65歳まで雇用することが義務付けられています。2021年(令和3)の同法改正で、65歳から70歳まで雇用確保をする努力義務が設けられ、増加する高齢社員への対応が企業の大きな課題になっています。
多くの日本企業は、高齢社員の増加による人件費負担の増大や人事の停滞を防ぐために、役職定年制やシニア社員制度を設けています。制度の内容は各社各様ですが、その本質は「社内老後」「社内ご隠居」の促進です。
つまり、「高齢社員の皆さん、お疲れさまでした。これからは、管理職や第一線の職務から退いて、補助的な業務を少しだけやって、のんびり余生を過ごしてください。その代わり給与を大幅に下げさせてもらいます……」というわけです。
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