中国を牽制する狙いでフィリピンに肩入れしてきたバイデン政権にとって、南シナ海以上に重視するのは台湾有事への備えだ。
マルコス政権が新たに認めたアメリカ軍使用拠点4カ所のうち3カ所は、ルソン島北部に集中している。台湾までの距離が350キロメートルほどしか離れていない地域だ。
アメリカはこれまで、台湾有事の際にどのような軍事的・外交的支援をするのかをあいまいにする政策をとってきた。その台湾に対してトランプ氏はかつて防衛費の増額を求め、「国内総生産(GDP)の10%まで引き上げるべきだ」などと発言している。
台湾が抱く不安はフィリピンでも
第2次トランプ政権下で台湾有事が起きた場合、果たしてアメリカ軍は助けてくれるのか、台湾の人々の不安は増している。
フィリピンも同様だ。バイデン政権はこれまであいまいだった南シナ海紛争への関与について、MDTの対象に含まれるとはっきりさせた。アメリカの政権交代が両国関係に変化を生まないとの公式見解を示すマルコス政権も内心ではトランプ氏の予見可能性の低さを案じている。
第1次政権でトランプ氏は、東南アジア諸国連合(ASEAN)が主宰する首脳会議に4年連続欠席した。フィリピンに限らず、東南アジアはトランプ氏の関心の外にある。
他方、ASEANの多くの国は対米貿易黒字を抱えていることもあり、第2次トランプ政権の通商政策の行方を、固唾を飲んで見守っている。中国からの迂回輸出を疑われる恐れもあり、関税大幅引き上げへの警戒感が強い。
加えてフィリピンは不法移民の取り締まりを注視している。在外同胞からの送金はフィリピンのGDPの1割以上を占めている。うち約4割はアメリカからの送金だ。
アメリカの世論調査機関・ピューリサーチセンターの2019年の調査によると、アメリカに住むフィリピン系住民は420万人。うち16万人とされる不法滞在者が強制送還されるとフィリピン経済にも影響がでることが危惧されている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら