オースティン氏は会見でトランプ次期政権での比米同盟への見通しについて聞かれ、「民主、共和両党ともにフィリピンを強く支持している。同盟の強さは政権を超えて続くだろう」と話した。
両国政府には第2次トランプ政権が発足する前に、安全保障面を中心に現行の枠組みを固め、既成事実化しておきたい思惑がある。
マルコス氏の前任のドゥテルテ前大統領は歴代政権の伝統的な親米路線を転換し、その前任のアキノ政権が提訴した南シナ海の領有権をめぐる仲裁裁判で2016年7月、中国の主張を退ける裁定が出たにもかかわらず、これを棚上げして中国に接近した。
政権交代前に固めたい安保の枠組み
ドゥテルテ前政権の継承を唱って2022年の大統領選で圧勝したマルコス氏は、外交・安全保障政策でも前政権の親中路線を引き継ぐとみられていたが、バイデン氏の積極的な働きかけもあって就任後、親米路線に大きく舵を切った。
南シナ海の領有権争いで中国に一歩も引かない姿勢を示す一方で、EDCAに基づきアメリカ軍が使用できる国内の拠点を5カ所から9カ所に増やした。
バイデン氏らアメリカの政権高官も「米比同盟は鉄壁だ」と繰り返してきた。アメリカ軍は2024年4月の合同演習の際、フィリピン北部に中距離ミサイル発射システムを持ち込み、そのまま撤去させずに中国ににらみを利かせている。
同年7月30日にマニラ首都圏で催された両国の外務・防衛閣僚会合(2プラス2)でアメリカ側は比国軍と比沿岸警備隊の近代化支援に「前例のない規模」(オースティン氏)の追加支援をすると発表した。
経済面でも、アメリカは日本政府とともに「ルソン経済回廊構想」を打ち出し、多面的な援助、支援を約束してきた。
アメリカを中心とするアジアの安全保障はこれまで、アメリカと日韓豪フィリピンなどの同盟国が2国間で直接につながるハブ・アンド・スポーク型だったが、バイデン政権は、アメリカと複数の同盟国が連携する「格子状」の関係をめざすようになった。
日米豪印の「QUAD」や米英豪の「AUKUS」のほか、米日韓や米日比といった枠組みがそれにあたる。いずれも対中国を見据えての連携だが、トランプ次期政権が「格子状」を維持するかといえば疑わしい。
2国間のディールを好むトランプ氏は経済や貿易面に限らず、安全保障面でも2国間交渉を優先させる可能性がある。
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