低価格「3Dプリンター住宅」で被災地の生活再建を 石川県珠洲市 水回り完備50平米1LDKが550万円

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2024年10月2日、木造中心の住宅文化の能登には、聞きなれないニュースが飛んできた。珠洲市上戸町にオープンしたばかりのホテル「notonowa(のとのわ)」の敷地内に、白く輝く新築住宅「serendix50(セレンディクスごじゅう)」が竣工。手がけたのは、国内では初となる3Dプリンター住宅メーカーの「セレンディクス社」だ。

珠洲市に竣工した「serendix50」(画像提供/セレンディクス社)

ホテル「notonowa」の別棟として使用するほか、被災者が無料で利用できる機会も設ける予定。住宅を失った人に、新しい住まいの選択肢として検討してもらえるよう、モデルルームとしても機能している。

「serendix50」を発注したのは、ホテル「notonowa」のゼネラルマネージャーである蔵雅博さん。数年前から3Dプリンターハウスに興味があり、震災前はグランピング施設として建設を考えて、同社に実際に相談していたそうだ。

震災直後は検討がストップしていたものの、3月ごろから再度動き出し、住宅再建に向けたモデルハウスとして用途を変更して建設することになった。このスピード感のある動きの背景には、被災した地元の人々に、「生活再建が始まっている」ということを伝えたいという思いもあったのだそう。

低価格&圧倒的なスピードで家が建つ

「serendix50」は、50平米1LDKの平屋建てで、2人暮らしを想定して設計されている。その特徴は何といっても、低コスト。水回りの設備込みで、550万円(税別)で建てられるというから驚きだ。

さらに、愛知県小牧市で建設された「serendix50」のモデルハウスは、44時間30分で施工が完了。珠洲市での工事は、道路状況など交通インフラの影響を受け、最短時間での施工は実現できなかったものの、2週間程度で家が建った。通常、新築住宅は数カ月間要することを考えれば、圧倒的なスピードだ。

施工の手順はこうだ。石川県外に設置している3Dプリンターで、設計データに基づいてパーツを“印刷”する。パーツを珠洲市まで輸送し、協力会社のサポートのもと、現地でパーツを組み立てる。その後、内装工事を行い、竣工。ちなみにパーツは専用の特殊なモルタルでできており、13個の壁パーツなど大小の部材を組み合わせる。

建設時にパーツの内部空間にコンクリートを注入して構造部材としており、その厚さは30cm以上。やわらかい質感でもこもこしているように見えるが、触ると重厚感があり、外部環境からしっかりと守ってくれる安心感がある。さらに今回は新しい試みとして、基礎も3Dプリンターでつくったそうだ。

モルタルの積層痕(画像提供/セレンディクス社)
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