日本の不動産業界 経済低迷に伴い、高水準の空室率と賃料下落が継続《ムーディーズの業界分析》
AVP-アナリスト 高橋 良夫
ストラクチャード・ファイナンス・グループ
VP-シニアアナリスト 大久保 敬裕
ムーディーズは日本の不動産市場の見通しを「安定的」から「ネガティブ」へ変更した。この見通しは、今後12カ月から18カ月における業界のファンダメンタルズな事業環境に関するムーディーズの見方を示したものである。
この見通しは、ムーディーズが格付けを付与している不動産会社4社と不動産投資信託(J-REIT)18社に関連する業界環境の見方を示すものであり、その意味で主に東京都心の賃貸オフィス市場が対象となっている。
日本経済の低迷とオフィスの大量供給が市場回復の阻害要因に
日本経済の回復は遅れており、それに伴い、オフィス需要の低迷が続いている。加えて、2012年には東京都心部で大型ビルの大量供給が予定されている。このため、東京都心部の賃貸オフィス市場の回復が遅れる懸念が高まっている 。
高水準の空室率と市場賃料の低迷は継続
経済成長の鈍化と円高の進行に伴い、日本企業は、国内投資と雇用を抑制している。この結果、東京都心5区のオフィス空室率は高水準の状態が続いている。ムーディーズは、空室率は13年まで8%から9%台で推移すると予想している。また、過去2~3年と比較し下落幅は縮小するものの、市場賃料の下落は少なくとも13年半ばまで続くと考えている。下図のとおり、08年初めの空室率は3%であり、現在の空室率は高水準となっている。
図表1:東京都心5区の空室率と平均募集賃料の推移
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