日本の不動産業界 経済低迷に伴い、高水準の空室率と賃料下落が継続《ムーディーズの業界分析》

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賃貸住宅市場の稼働率と賃料の安定化が賃貸住宅系リートを下支え

ムーディーズでは、賃貸住宅に特化したJ-REITにおける収益力のさらなる悪化は見込んでおらず、これらの発行体の業界環境に対する見通しは安定的とした。

» レバレッジを低下させるには、規律のある投資・財務ポリシーの徹底が必要:収益の回復やそれに伴うレバレッジの改善が期待できない発行体も一部にはあるが、それ以外の発行体については、レバレッジの改善は、保有賃貸資産の質、事業ポートフォリオなどに加え、投資や財務方針次第であろう。

» 潤沢な資金調達環境はデレバレッジを阻害:J-REIT においては、投資口市場が低迷する一方、デットファイナンスでは低金利で豊富な流動性が提供されている。このため、J-REITは資産取得のため、借り入れを増やす可能性があろう。一方、ポートフォリオの分散度が低く、資産の質が相対的に劣るJ-REITの収益力は低下し、その結果、時価ベースでのLTV(資産価値に対する負債比率)が悪化する可能性があろう。その場合、資金提供者はより高水準のリスクプレミアムを要求する可能性があろう。
 
» 仮に中長期的に金利が上昇した場合、発行体の事業財務運営に大きな影響:長らく続く低金利環境が日本の不動産市場を下支えしている。こうした中で、仮に金利が中長期的に上昇するような事態に直面した場合には、レバレッジが高い発行体は、事業財務方針の見直しを迫られるであろう。ただし、不動産会社とJ-REITの借り入れのほとんどは固定金利で賄われているため、それにより、少なくとも短期的な影響は緩和されるであろう。

» 今後空室率が低下し、市場賃料が安定化した場合には、業界見通しは安定的に:今後主要な不動産賃貸市場の空室率が大きく改善し(たとえば、東京都心5区オフィス空室率で5%から6%程度)、市場賃料が安定化した場合には、ムーディーズは日本の不動産業界の見通しをネガティブから安定的に戻すことを検討する(見通しが安定的な賃貸住宅に特化したJ-REITは除く)。

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