日本は、国内経済や雇用、科学インフラの項目は高く評価されている。しかし、「政府の財政状況」が第64位であることや、「企業の経営慣行」が65位となっており、これが日本の順位を下げる大きな要因になっている。
「企業の経営慣行」で低評価になるのは、上位の管理者に国際感覚が乏しく、世界経済の変化に迅速に対応できないからだ。
ランキングが低下し続けている背景
「国際競争力ランキング」が開始されたのは1989年だ。そして、1989年から1992年まで、日本は世界第1位だった。その後も、1996年までは5位以内だった。しかし、1997年に17位に急落。ただし、その後は、第20位程度で推移してきた。ところが、2019年に第30位となり、以後は、第30位台から脱却できないでいる。
この推移は、日本のGDPや賃金などの推移と見事に一致している。
日本の経済指標は、1980年代まで急成長を続けてきたのだが、1990年代の後半になって急に頭打ちになり、その後、長期の停滞が続いている。
注意すべきは、「国際競争力ランキング」で日本のランキングが急低下を始めた1997年という時点は、バブルの崩壊よりは少し遅れていることだ。
バブル崩壊は、株価については、1990年であり、地価については1992年頃だ。株価のバブルが崩壊してもなお、日本の競争力のランキングは高かったことになる。これは、日本企業の競争力を低下させた原因が、バブルの崩壊ではなく、別のものだったことを示している。
競争力低下の大きな要因は、1980年代に生じた世界経済の大きな変化に対して、日本企業が適切に対処できなかったことだ。とりわけ、中国の工業化とIT革命に対応できなかったことの影響が大きい。それが日本の製造業の成長を抑えた。そして、雇用が生産性の低いサービス産業で増加した。それによって、日本経済の効率性が低下したのだ。
それに加え、政策の誤りもあった。とくに、デジタル関係での政策だ。これについて、次項で述べることとしよう。
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