大きな「補正予算」と借金依存が下がる決算の落差 「もはやコロナ禍ではない」景気は下支えなしでOK

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国債を増発してまで巨額の補正予算を組むということが、必要なのか。

補正予算が閣議決定された同じ日、加藤財務相に手交した財政制度等審議会の意見書「令和7年度予算の編成等に関する建議」は、「もはやコロナ禍ではない」という書き出しで始まっている。

予算規模はコロナ禍で膨張したものの、コロナ対策は財政的にもはや必要なくなったにもかかわらず、依然拡大したままであり「速やかに平時化させる必要がある」として、コロナ前の水準に戻すよう求めた。

また、同じ日に国会に提出された2023年度決算では、巨額の補正予算が組まれたものの、公債依存度は27.4%と1997年度以来初めて30%を割った。長期政権だった第2次以降の安倍晋三内閣でも、30%を割ったことは一度もなかった。

2023年度の補正後予算では、公債依存度は34.9%だった。それなのになぜ決算ベースでは27.4%になったのか。

補正後予算から決算にかけて公債依存度が下がるワケ

予算に計上された歳出は翌年度に繰り越す分も含めて、財源が手当てされていなければならない。だから、補正予算を組む段階では、歳出を全額賄えるだけの財源の手当てをしていて、税収等だけでは足りないために、国債の増発を計画する。2023年度補正後予算ベースで国債発行額は、44.5兆円と見込んでいた。

しかし、予算に計上されながら結局使われずに失効した予算の不用額が、2023年度決算ベースで6.9兆円生じた。結局使わなかった予算には財源を充てる必要はない。

さらに、税収が補正後予算ベースから上振れするなどして国債発行で財源を手当てする必要がなくなり、最終的には国債を予定していたよりも9.5兆円も発行せずに歳出の財源を賄えた。

公債依存度が27.4%まで下がり、2023年度は借金依存を減らした財政運営を行ったことになるのだが、それで景気が大きく悪化しただろうか。決してそうではない。2023年度の日本経済はむしろ物価高騰が賃金上昇を上回って足を引っ張った。財政の下支えがないから災いしたわけではない。

これを教訓に、2025年度予算案は、借金依存を減らして「もはやコロナ禍ではない」姿にしてゆくべきである。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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