「ごめん。なかなか言い出せなかったんだけど、妻とはまだ籍が抜けていないんだ。お金のことでもめていて、らちが明かなくて」
「バツイチだ」と言っていたのは、うそだった。
「もう青天の霹靂でした。バツイチといわれれば離婚していると思いますよね。その日は食事も途中で席を立って、1人で店を飛び出しました」
駅に向かう道すがら、涙があふれてきた。電車の中では泣くのを必死に我慢し、ある駅で降りた。そこには、悩んだときに訪れる占い館があった。
背中を押した占い師の言葉
「いつも観てもらう先生がいたので、泣きながらすべてを話しました」
すると、その占い師は言った。
「41歳の誕生日が、新しい道を歩く運命の分かれ道になったんです。今別れて、結婚を真剣に考えてくれる独身の男性に出会ったら結婚もできるし、年齢的にも最後のチャンスに子どもを授かれるかもしれませんよ」
その言葉に背中を押されて、彼とは別れる決心をした。
その夜、LINEで別れ話をすると、彼はすんなりとそれを受け入れた。
〈うそをつくつもりはなかった。ただ、あやみにどんどん引かれる自分がいて、言いそびれてしまった。ごめんなさい〉
あっさりとした幕切れだった。悲しかったが、何か腑に落ちないモヤモヤを感じた。
そこで、彼と同じ会社に夫が勤めている大学時代の友人に、恥を忍んですべてを話した。本当は結婚が決まったら、サプライズで驚かせるつもりだったのだが、彼の素性を探ってもらうことにした。
すると、妻とは別居しているわけではなく、2人目の子どもが生まれたばかりだというのがわかった。
「彼は、『社員寮で暮らしている』と私には言っていました。だから、私の家には来るけれど、彼の家には行ったことがなかった。ただ、泊まっていくこともあったので、まさか妻子がいるとは思いもしなかった」
泊まることができたのは、奥さんが上の子どもを連れて出産のために数カ月里帰りしていたからだった。
ここまで話すと、あやみは言った。
「結婚相談所にいる人たちは、独身証明書を出しているから、みなさん独身ですよね。私には、もう時間がない。もし半年くらいでお相手が見つかったら、最後のチャンスに子どもが望めるかもしれない。真剣に婚活をします」
無料会員登録はこちら
ログインはこちら